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四月 『ショッピングモールでの危機―後編―』

 え、ちょっと待って。なんで君たちいるの?


「どうした? (ゆう)

 優がとぼけた顔をしているので、(はやと)は不思議に思ったようだ。

倉ノ下(くらのした)君って普段こういうところ来るんだね」

 (はなぶさ)さんが口を開いた。

「いや、その…今日はちょっと違くて…」

「ん? なんだ?」

「そ、それより、隼たちだってなんでここにいいるんだ!?」

 僕は気が動転していて、焦りまくっていたことも気が付かなかった。

「え? そりゃあね…」

 隼と英はお互いの顔を見て、ニコッと微笑んだ。

「買い物に決まってるじゃん」

「え? なに? 君たち付き合ってんの?」

 そういやこの二人よく一緒にいるよな。

 それを聞いた隼はハハッと笑った。

「そう見えるのも無理ないよな。でもちょっと違うな。俺たち幼稚園からの幼馴染なんだわ」

 出た幼馴染。とうふとわたあめもそれっぽいし…あ、昨日言ってたっけ。…僕の周り、幼馴染多いなあ。

「なるほど。要するに…友達って感じで来てるんだね。お互い特別な感情を持っていないと」

「おう。その通りだ」

「そうだね。まあ親友のほうがいいかも!」

 へえ、そういう関係ね。仲良しだなあ。

「で? 結局優は何しにきたんだ?」

 くっ…回避できないか…しょうがない。

「あ、あれだよ。他のクラスの友達と、その妹と一緒に来てるんだけど、友達と遊ぶついでに妹のほうのめんどうを見てるって感じ」

 ふぅ…いい感じの言い訳ができたかな?

「へえ…倉ノ下君、他のクラスの子と仲いいんだ。もしかして女の子?」

 なんでそういう疑問が湧いてくるんだ。

 さてと――

 ブーブーブーブー…

 ポケットの中のスマホが電話の着信の合図を出した。おそらくノアからだ。

 やばい! ノア買い物済んだんだな? くそお…こういう時に限って。噂をすればってこういうことなんだね。…ここは本当のことを言っておこう。

「はい、そうですね」

「なら、そっちこそ付き合ってるの~?」

「あいにく、僕は付き合おうとは思ってません。勉強で忙しいですし」

「あら、そうなの? 勉強熱心でいいね」

 勉強馬鹿って言われるかと思っ…頭の中で思ってるんだろうな。

「ありがとうございます」

 そこで隼が口を挿む。

「そろそろ行こうぜ。じゃあな優…またあとで会うかもしれんが」

 隼は人の流れに乗って歩いて行った。

「うん、ばいばい」

「また今度ね~」

 英さんは手を振って隼のところまで走っていった。こら、ノアお母さんが怒りにやってくるぞ。

「あ、いたいた」

「優君? なんで電話に出てくれなかったの?」

 ほら、怒りに来たじゃないか。…僕に。

「ごめん、気が付かなかった。で、買えたんだね?」

「うん、買えたよ。ほら」

 千穂理(ちほり)が手にもっていた大きい袋を目の前に出した。

「よかったな。それ、僕が持つよ。――じゃ、さっさと靴を買いに行こう」

「待って」

 ノアが真剣な顔で僕を見ている。

「なんでそんなに焦っているの? さっき説明してくれるって言ったよね?」

「ああ、わかった」



「――と、言うわけで、すっごく焦ってた」

 僕は歩きながら二人に説明した。とうふとわたあめや隼と英さん(二組(ふたくみ)とも名前を伏せておいた)がいたこと等。

「それに、もしかしたら他のカップルもいるかもしれないから、注意してね」

 さすがにすみれはいないとは思うけど、可能性はゼロじゃないからなぁ…。

「つまり、お姉ちゃんとお兄ちゃんが付き合ってるのをばれないようにするってことね」

「「付き合ってないから」」

 この一週間で『付き合ってる』という言葉を何回聞いただろうか。

 というか今の千穂理の発言、絶対わざとでしょ!

「あ、着いたよ」

「靴~!」

 千穂理は店の中に足を弾ませた。

 というか、本といい、服といい、靴といい…全部千穂理のじゃないかっ!

「あ、こら! 千穂!」

 やっぱり母親にしか見えない。

 さて、先に知り合いがいるか確かめなきゃ。


「よかった、この店には誰もいないな」

 一通り見て回ったが、知り合いは一人も見当たらなかった。いや、それ以前に――

 僕たち三人以外、客が一人もいない。

「ノア、勇気あるね」

「いや…客がいなかったのに気が付かなかっただけだから…」

 そっちじゃなくて、その状況でもここにいられることなんだけど…まあいいか。

「ねえ、お兄ちゃん。この靴似合うと思う?」

「残念なお知らせがあります。僕はファッションとかは全然わかりません」

「ははは! アナウンスみたーい! …じゃなくて、そういうのわからなくてもいいから、お兄ちゃんが思ったことを教えて!」

 とにかく評価してほしい様子。

「しょうがないな…どれどれ」

 優は二人に背を向けて歩き出した。

「優君どこ行くの?」

「ちょっと待ってて」


「ほら。これ履いてみて」

 僕は持ってきた靴を千穂理に渡した。

「うん、わかった」

 千穂理は履いていた靴を脱ぐと、優が渡した靴に履き替えた。

「一見普通だけど、これがなんなの?」

 ノアは僕を見て、首をかしげた。

「まあまあ。千穂理、どう?」

「なにこれ…すごく履き心地がいい!」

 千穂理は瞬く間に笑顔になった。

「そう! そうなんだよ。それに、その靴は防水用で、値段も最初に履いてたのと同じくらいなんだ」

「へえ、すごいね…一体どこから見つけてきたの?」

「店員に聞いてみたんだ」


「防水用の靴はどこにありますか?」

「防水用の靴は…あの場所に固まっていますよ」

「ありがとうございます」

 僕はすぐに店員に言われた場所に行き、靴底の履き心地が良さそうで、かつ見た目も問題ないものを選んだ。その靴は分かりにくいところに置いてあったので、見つけるのに時間がかかった。


「なんで防水用の靴を聞いたの?」

 千穂理は優を見て問うた。

「まだ早いかもしれないけど…あと一か月くらいしたら梅雨の時期に入るでしょ? だから、それにした」

「なるほどね…先を見てるね」

 商売はだいたいそんなもんだからね…。

「後から気付いたけど…この店は商品のアピールとかしてないから、だから客が来ないんじゃないかな」

「それにしても一人もいないって不思議だよね…」

「うん…」

「お姉ちゃん、私これにするね!」

「「…え?」」

 千穂理は、僕が選んだもの――ではなく、最初に履いていたものを持ってレジに向かおうとしていた。

「千穂? なんでそっちにするの?」

 千穂理は僕が選んだ靴を見て、

「だってそれ、この靴よりも見た目が劣るもん」

 ええ!? やっぱ女子ってそういうの気にするんだ…。

「見た目より性能重視しないの? これ、すごいじゃない」

「私は見た目重視なの! だからこれ!」

 千穂理は僕が選んだ靴を買うことを断固として拒否するらしい。

「…後悔しても知らないよ?」

 何回もあったことなのだろうか。ノアは諦めたようだ。

 結局僕が靴を選んだ時間は無駄になった。結構本気だったんだけど。悲しい。…と、思いきや、

「なんだかもったいないから、これ、私が買うね」

 無駄にはならなかったらしい。

「え? あ、無理に買おうとしなくてもいいんだけど…」

「えっと、私が履けるサイズを探さないと…」

 ノアは僕の話を聞かずに歩き始めた。



「いいの買えてよかったね、千穂」

「うん!」

 僕の前で美少女二人が歩きながら話している。

 僕は今、千穂理の服が入った袋と千穂理とノアの靴が入った袋を両手に分けて持っている。意外と軽い。

「お姉ちゃん、おなかすいた。早く昼ごはん食べたい」

「もうちょっと我慢してね。今向かってるから」

 このショッピングモールには、フードコートと呼ばれる、巨大な食堂のようなエリアがあるらしい。そこではファーストフード店がたくさん並んでいて、その店で注文したものをすぐに座って食べれるらしい。無論、僕はそこには行ったことが(記憶には)一度も無い。

 で、今まさにフードコートへ向かっている途中だ。

「千穂、何食べる?」

「うーん…うどん食べたいな」

「優君は?」

「僕も、うどんでいいよ」

 何があるのか知らないし。

「なら、私もうどんにするね」

 三人で仲良くうどんを食べることになった。わーい。

「ねえ、さっきから思ってたんだけどさ…」

「どうしたの? お兄ちゃん」

 千穂理は不思議そうな顔で僕を見た。

「周りからの視線がすっっっっっっっっっっごい痛いんだけど」

「そんなに?」

「朝言ったじゃん、私たちが歩いてると男子生徒がチラ見してくるって」

 ノアと千穂理は当たり前のように言ってくるが、割とマジでやばい。

「この様子だと…全年齢対象じゃないかな…」

 しかしこれは結構やばいぞ…知り合いに見つかりやすい。やばいって。

「優君、顔色が悪いけど、大丈夫?」

「うん、全然平気だ――」

 予感が的中した。だって…今、僕の肩を誰かが叩いたもん。

「よう、また会ったな、優」

「…隼?」

 僕は後ろに振り向いた。

「俺以外誰がいるってんだよ。…ってあれ? そこの金髪さん前に会ったよね?」

 僕の後ろにいるノアを見た隼はすぐに思い出したようだった。

「あ、どうも」

 いや何会釈(えしゃく)してるの? 今そういう問題じゃないと思うけど!?

「確か、倉ノ下君は篠崎さんって言ってたよね?」

 隼の後ろにいた英さんは僕を見た。

「はい、そうですけど…」

「あと、さっき妹って言ってたよね? てことは、篠崎さんの隣にいるのは篠崎さんの妹なの?」

「はい、そうです」

「へえ…姉妹揃って美少女なんて、すごいね!」

 やっぱそう思うよね。

「そ、それで、隼たちはなんでここにいるの?」

 僕は強引に話題を変えた。

「今から昼飯食おうと思ってな。フードコートに向かってたら、お前らに会ったんだよ。もしかして、優たちもフードコート目当てか?」

 まさか目的が同じだったとは…。

「うん」

「それなら――」

「あれ? 奇遇だね」

 隼の言葉はその言葉によって遮られた。

 さて、だれの言葉でしょう? 答えはCMの後で! っていう台詞(せりふ)が音楽とともに聞こえてきそうな場面だな…。

千鶴(ちづる)さん!? しかもとうふとわたあめまで!」

 『勘違いセンター 誤解ジャー』だ! これはまずい…!

 さらに、千鶴の後ろからぴょこっと顔を出す人物が目に入った。

「伊万里!?」

「あ、優!」

 今、僕の周りには、ノア、千穂理、隼、英さん、千鶴さん、とうふ、わたあめ、伊万里の、合計八人がいる。しかも全員この一週間で友達になった人たちだ。でも、すみれだけいなかった。…いやまあ、この面子(めんつ)でもすごい偶然なんだけど。

「みんな…他の人たちの迷惑になるから、話す前にフードコート行こうか」

 僕が声をかけると、みんな返事をしてくれた。



 フードコートに着くと、みんなが座れるところを探してから、それぞれ座った。

 男子四人、女子五人で非常にバランス良く分かれることができた。荷物を置き、僕を除く全員が昼ご飯を買って戻ってきた後、僕は自分の分を買いに行った。みんなの荷物を見張っておくからという理由でそれができたが…実は、絶対変な誤解をされると思ったからそうしたのだ。ノアには悪いけど、千穂理がいい感じにフォローしてくれることを願う。

 さて。

 僕はきつねうどんを受け取ってから、みんながいる場所へと向かった。


「へえ、篠崎さんの妹さんもすごく可愛いね!」

「えへへ…ありがとうございます」

「何年生なんだ?」

「二年生です。先輩方の一つ下ですよ」

「近くで見ると、二人とも超可愛い!!」

 僕が戻ったときには、そんな会話が繰り広げられていた。

 なんかいい感じに治まってるっぽい。

 英さんと伊万里が険しい表情でこちらを見てるのが目に入った。

 ん?

「お、優やっと戻ってきたか。お前友達だなんて嘘つくなよ。やっぱ付き合ってんじゃん」

 ん?

「もごごごごご!!」 

「倉ノ下、こんな美少女二人とデートなんて羨ましいぞ!」

「どっちか分けてくれよ…なんてね。いいなあ彼女いてさー」

 千鶴さん…とうふとわたあめまで…全然治まってないじゃん。さすが誤解ジャー。というか千鶴さん口に食べ物入れたまま喋らないで。口からラーメンの麺が出てるから。

 僕は自分が座る席にうどんを置き、ノアと千穂理がいる場所に行った。

「ノア、千穂理、一体どんな話をしたのかな?」

「いやあの! これはその…千鶴があ!」

「そう! あの、いも先輩が最初に言いだして!」

 二人とも千鶴さんを指差した。というか責任を一方的に千鶴さんに押し付けた。しかも千穂理、いも先輩って…失礼でしょ。――これはまた、誤解を解くのに時間が掛かりそうだ。

「もごっ!? もごご!?」

 いやだからちゃんと食べてから喋ろうよ。今のはたぶん『え!? あたし!?』なんだろうけど。

 僕は自分の席まで戻り、立ったまま真剣な表情で言った。

「みんな、聞いて。僕は、ノアと付き合ってない! ノアの彼氏でもない! 今日のはただの付き添いだから、デートじゃない!」

「…………」

 僕のこの言葉でみんなは言葉を失った。

 最初にこの沈黙から抜け出したのは…

「え? お姉ちゃん、昨日自分の部屋で『明日優君とデートだ! やったあ!』とか言ってたよ?」

 千穂理…なのだが、とんでもない発言をしたな!

「…ノア?」

 僕はノアを見た。すると、彼女は魂が抜けたように白くなっていた。

 …。

 ………。

 ……………。

 千穂理、やってくれたな。

「優、お前は本当にデートじゃないと思ってたんだな?」

 隼が急に口を開いた。

「隼…? …うん。そうだけど」

「ごめん、勘違いしちまって」

 隼は申し訳なさそうな表情で謝罪した。

「うん、誤解が解けたならそれでいいよ」

「ああ、ほんとにすまん。――みんな!」

 そこで隼は全員に声をかけた。

「この通り、優は本当に付き添いらしいぞ。デートだとは思ってなかったって」

 いや、実際デートじゃないからね? 実はデート、みたいな言い方だからまた別の誤解が生まれるん――

「篠崎さんはデートだと思ってたのでしょう? なら、つまりそういうことよね?」

 ほら。…いやこれは千穂理が原因か。

「千鶴、もういいだろ」

 隼が真剣な顔で千鶴を指摘する。

「ごめんごめん。前言撤回」

「だから、俺が言えることじゃないかもしれないけど…みんな、はやし立たりするのはもうやめよう。もうこの話もナシだ」

 みんなは隼のその言葉にうなずいた。


「ごちそうさまでした」

 僕は静かに合掌を済まし、きつねうどんが入っていた瀬戸物(せともの)をお盆に置いて、元の店まで持って行った。

 僕とノアと千穂理以外のみんなは、先ほどそれぞれ別の場所に散った。

 ノアと千穂理はすでに片付けが済んでおり、疲れたのか、いつの間にか二人は身を寄せて寝ていた。

 この寝顔も可愛い。これ写真に撮っておきたいな。さすがにそれはやめとくけど…あとで三人で撮るか。ゲームセンターはいつ行くのだろうか。このまま寝させるわけにもいかないけど…起こすわけにもいかないし。まあ、二〇分くらい寝かせておくか。僕はその間に、勉強でもしとこうかな。


「ん…」

 二〇分経ったので、僕は勉強をやめて伸びをした。

 二人ともまだぐっすり眠っている。でもしょうがない。

「おーい、二人とも。起きて」

 僕は二人の肩を揺さぶって声をかけた。

「……ん? あれぇ? 私寝てたんだぁ…ふわぁ…」

 千穂理はあくびをしながら起きた。が、ノアはまだ寝ている。

「ノア! 起きて! おーきーて!」

 ノアの目の前に立ち、彼女の両肩を手で揺さぶった。

「……ん? あれぇ? 私寝てたんだぁ…ふわぁ…」

 千穂理と全く同じこと言った! すごっ! やっぱり姉妹だね。

「ねえ、二人とも。今一時だけど、ゲームセンターには行くの?」

「どうしようか」

「うん…今日はお金いっぱい使ったし、行かなくていいかな」

 ノアは立ち上がった。

「このあとどうするの? 帰る?」

「お兄ちゃんが家に寄ってくれるなら帰りたいなー」

 千穂理は荷物を持ちながら提案をした。

「そうだね…私も帰りたい。…けど、さすがに優君は寄れないでしょ?」

「ごめん、今日は三時から用事があるから行けないよ」

「ええ~残念。まあいいや、帰ろう」

「うん」

 こうして、僕たちはそれぞれの家に帰った。



「ただいま」

 僕はいつものように返事が返ってこないのを確かめながら、靴を脱いでリビングへと向かった。何か違和感を感じたが、気にしなかった。

「おかえりなさい」

 お母さんのような声が聞こえたが、気のせいだろう。僕の心が寂しがってるのかな…。

「おかえりなさい、優君」

 え? いや、まさか…。

 リビングへの扉が開いていた。僕はリビングへ入ると、目を見開いた。

「すみれ…?」

 私服姿のすみれが、ソファーに座って、こちらを見ていた。

「おかえりなさい」

「ただいま…じゃなくて、なんでここにいるの!? ここ僕の家だよ!?」

「いいじゃん…家隣なんだし。それに、この前約束したでしょ? 私は勝手に優君の家にいてもいいって」

「いつの話!? そんな話した覚えないけど!」

「あの時だよ…優君が熱出して、私が看病してあげた時だよ」

「うん…僕そのとき寝てたから知らない」

「ま、そゆことだから。それに、優君が帰ってくるまで掃除してあげたんだからいいでしょ」

 そんな前から来てたの!? それに掃除なんて頼んでないし! あと自動掃除機使った感消せてないし! あ、違和感の正体やっとわかった。玄関の鍵が掛かってなかった。朝家を出発するときには掛けたはずなのに…。

「それで、何しに来たの?」

「いろいろ話したいこともあるけど、他に、家ですることないし…弟は部活だし…ってことで来たの。でも、優君いなくてさ、暇をつぶしてたの…てか、優君こそどこ行ってたの?」

 あ、そういや本買ってたんだ。これでいいだろう。

「ほら、これを買いに行ってたんだ」

 僕は買ったラノベをかばんから取り出し、すみれに見せつけた。

「あ、それ面白かったやつ! へぇ、それ買ったんだ」

 すみれは近づいてその本を見ていた。

「うん…それと、ちょっと寝てていいかな? 今眠たいんだ」

「いいけど、どこで寝るの?」

 どんな質問だよ。

「そりゃあ、自分の部屋で寝るよ」

「なら私もそこにいていい?」

「…別にいいけど、睡眠の妨げになるようなことはしないでね」



「……すう……」

 優が眠りについた頃。

「ふふ…気持ちよさそう…」

 すみれはそうつぶやいていた。

 優はベッドに横たわって一〇分もしないうちに寝てしまった。すみれは優の本棚から本を見たりしていて、優が寝たことに気付いた彼女は優の近くに座った。

「…私も眠たくなってきちゃった…ふわぁ…」



「…ん…」

 僕は目を覚ましたので、まず目をぱちくりし…ようとしたらそれどころじゃなかった。

「あ、起きた」

 目の前にすみれがいた。一緒に寝てる感じで、僕の横に横たわっている。それで、僕を見つめている。

「すみれ…なにしてるの?」

「いいじゃん。こういうのやってみたかったの」

「なにそれ。…てか、今何時?」

 僕は目覚まし時計を手に取り、時間を確認した。

「二時半か…てことは、一時間くらい寝てたのかな?」

「そのようだね。私も少し眠っちゃった」

 じゃあ少しの間隣で寝てたんだ…。

「ごめん、寝すぎた。…僕三時からバイト行くけど…すみれも行く?」

「行くよ~」

「それまで僕は勉強するけど、すみれは?」

「そうなの? なら私この本見るよ」

 すみれが手にしたのは和菓子のレシピ本だった。

「わかった」

 

 この後、僕とすみれはバイトで働き、僕とすみれと沙耶(さや)さんの三人で一緒に帰った。今日は午前中は長かったけど、午後はそうでもなかったように感じた。

 明日は日曜日。明日はバイト以外の予定は無いから、ゆっくり過ごすとしよう。そろそろ四月も終わりそうだな。今年のゴールデンウィークは何をしようか。災難とか無いといいけどな。

 プルルルル、プルルルル…

 また電話か!? 明日は何があるんだろう…。

読んで頂いてありがとうございます。

優とすみれ、優とノア…これからどうなっていくのでしょうか…?

感想、評価等、お待ちしております。

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