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四月 『ショッピングモールでの危機―前編―』

 四月二八日、午前九時三〇分。

 僕は今、『森林喫茶~川流れ~』という喫茶店の四人用の席に腰を下ろしている。この店のつっこみどころ満載なところは置いといて、今、目の前のテーブルには、コーヒーカップが三つ並んでいる。…て思ったけど僕が住んでる町の店の名前いろいろとつっこめるよね。さて。

 僕の手前のコーヒーカップの中には冷め切ったコーヒーが少量残っている。その隣に温かいココアが入ったコーヒーカップ。僕の向かい側の席に近い三つ目のコーヒーカップには何も入っていない。

 そして、コーヒーカップと同様に、僕の冷たい視線が向かい側の席の金色頭に刺さっている。それを温かい目で見ている人物は、僕の隣に座っている。


 こうなった経緯を説明しよう。



 昨日の夜。バイトから帰って土日のんびり過ごすかな~とか考えてると、僕の家に電話がかかってきた。

「ノア?」

『あ、優君(ゆうくん)? 明日、スケジュール空いてる?』

「うん、空いてるけど…」

『じゃあ、その…ちょっとだけ買い物に付き合ってくれないかな?』

「別にいいけど、なんで?」

『マイシスターが優君を紹介させて~、とうるさいから…なんかごめんね?』

「ああ、そういうことね。でも、なんで買い物行く必要があるの?」

『ついでって感じかな。じゃあ、待ち合わせは……午前九時に、森林喫茶の四人席で!』

「わかった。詳細は明日聞くね」

『了解! てことでばいばーい』

 ピッ、ガチャ。

 いや展開早すぎでしょ! 一瞬デートのお誘いかと思ったよ。でもまあ、さすがに知り合って1週間もたってない異性にデートの誘いするわけないよな。それにしても、ノアの姉かな? は、どんなお方なんだろうな…いや、今考えても意味ないから、明日まで楽しみにしとこう。寝る前に準備しないとな。

 そして、準備万端な状態で寝た僕は、今日の朝、八時半に家を出て、八時五〇分には喫茶店の四人席に一人で座っていた。一〇分の間は暇なので、コーヒーと勉強道具をテーブルの上に置いて、九時まで待つことにした。

 九時になり、一旦手の動きを止めて、周囲を見ると、蘇芳色(すおういろ)の髪を持った美少女がいた。髪型はポニーテールで白いリボンで髪を止めており、白いワンピースを身に纏い、足はサンダルで少し大きめのかばんを肩にかけている。

 その少女はテーブルの隣に立ち、こちらを見ていた。

「…なんですか?」

 僕の口から最初に出てきた言葉がこれだった。

「えーと…倉ノ下(くらのした)さんですか?」

 彼女は不思議そうな顔で聞いてきた。

 この女の子の口から僕の苗字が出てくるなんて予想してなかったから、一瞬驚いた。

「はい、そうですけど…何で僕の名前を知っているのですか?」

「わかりませんか? 私、お姉ちゃんの妹です」

 いやわかんないよ。

「あ、ごめんなさい。篠崎(しのさき)ノアの妹です」

 てっきり姉のほうだと思ってたから、また驚いた。

「ノアの妹…?」

「はい! ――隣、失礼しますね」

 元気よくうなずいた彼女は、僕の隣に座った。

 なんで向かい側の席じゃなくてわざわざ(こっち)に来たのかな? まあいっか。

「知ってると思いますが、僕は倉ノ下(くらのした)(ゆう)です。あなたのお名前は?」

 勉強道具をかばんにしまいながら、ノアの妹に質問をした。

「私は篠崎(しのさき)千穂理(ちほり)です」

「あれ? 名前、思いっきり日本人じゃないですか」

「そこは気にしないでください」

 いや、めっちゃ気になりますけど。

「ちなみに、栗花落中(つゆりちゅう)の二年生ですよ」

「本当ですか!? 僕はノアと同じで三年生ですよ」

 千穂理は今の優の発言を聞いて、にやりと笑った。

「ノアって…呼び捨てですか? もうそんな段階まで来てるとは…」

「君、たぶん勘違いしてますよ」

「っ!! 私のことは『君』じゃなくて千穂理って呼んでください! 敬語もだめです!」

 そこつっこむ!? というかノアと似てるな…妹だったか。

「わかったよ、千穂理ちゃん」

「ちゃん付けは恥ずかしいです。千穂理でいいです」

 一体何が恥ずかしいのやら。あ、そっか。中学二年生、そういう時期だもんな。あ…僕もだったな。

「なら、千穂理…一ついい?」

「はい…なんでしょうか」

「ノアはどこにいるのかな?」

 肝心のお方が見つからない。千穂理の陰に隠れている訳でもない。

「ああ、その、すみません。お姉ちゃん、寝坊しちゃって。先行っといてって言われたので来ました」

 なんてベタな…。思わず、小学生かっ! て、つっこみそうになったよ。

「寝る前までずいぶんとうれしそうでしたからね…今日のことで寝れなかったのでしょうか…だとしたら――」

「小学生かっ! …あ、ごめん」

 なんだか今のもありきたりなつっこみだったな。自分でつっこんどいて結構悲しくなってきた。

「お姉ちゃん、よくするんですよ、こういうの。可愛いですよね!」

 千穂理は僕の目の前まで顔を近づけた。

「そ、そうなのかな? まあ…確かに可愛いと思うよ」

 僕は頑張って目を逸らさずに、千穂理の話に共感(?)した。

「そうですよね! だからかな…最近、お姉ちゃんと歩いてたら、隣を通った男子生徒がいつもチラ見してくるんですよ」

 千穂理は姿勢を元に戻した。

「それは…おそらくノアと千穂理が一緒に歩いてるからこそ、だと思うよ」

 だって兄弟揃って美少女とか、すごいでしょ。チラ見するのも無理はないと思う。僕はしないけど。

「お兄ちゃん、褒めるの上手いですね。お姉ちゃんだけでなく、私のことも…。だからお姉ちゃんは惚れちゃったのでしょうか?」

 後半はスルーで。

「お兄ちゃんって何!? 僕、千穂理の兄じゃないよ!?」

「いいじゃないですか…この呼び方なんだかしっくりくるんですよ。呼びやすいし。…それとも、優兄(ゆうにい)とか、優お兄ちゃんとかって呼んでほしいんですか?」

 千穂理は上目遣いで、恥ずかしそうな表情をして優に問うた。

 これ、あれかな? 僕を堕とそうとしてるのかな? ごめん、僕には効かないよ。

「思ってないから。呼び方は好きにして。あとできれば敬語やめてほしい。話しにくく感じてきたから」

「じゃあお兄ちゃんって呼ぶね!」

 っと…そろそろノア来ないのかな。今は…九時一〇分か。って一〇分も過ぎてたんだ!

「千穂理…ノアはいつ頃来るのかな?」

「わからない…あと五分で来るんじゃないかな?」

 うん、僕がタメ口だと、相手も同じのほうが話しやすいな。あ、今までの僕、みんなにそう思われてたかな。

「ならそれまで話すか、勉強、どっちしたい?」

 答えは分かり切ってるんだけど、僕は勉強したいからな…。

「勉強、どれくらいできるの?」

 ん? これはもしかして…。

「人並にはできるかな」

「じゃあ、教えてほしいところあるから、勉強したい!」

 やった。勉強できる。

「いいけど…僕説明下手だよ?」

「気にしないから! だから教えて? ね?」

「なら早速準備してね。あと、ココアいる? 僕がお金払うから」

「いる! あ、今退()くからちょっと待ってね」

 千穂理はうなずくと、席を立ち、僕が出れるように促した。千穂理が席を退()かないと、僕は出れないので、そこを気遣ってくれたのだろう。

「ありがと。ホットココア淹れてくるね。すぐ戻るから」

「うん、よろしく」

 いやーまさか、会話より勉強を選ぶなんて、勉強熱心なのかな…。


「…なんかあった? ――はい、ココア」

 僕がココアを淹れて席まで戻ってきたとき、千穂理はほんのりと頬を赤くして、勉強道具をテーブルの上に広げていた。

「い、いや…なにもないよ」

 彼女はココアを受け取り、目を逸らして答えた。

 これ以上問うのは少し抵抗があったのでやめておいた。

 千穂理は席を立ちあがり、どうぞ、という仕草をして優を奥の席に座らせた。

「ありがとう。早速、教えようと思うけど…わからないとこを教えて」

「えっとね、待ってて。今教科書開くから。……と、ここかな」


 千穂理に勉強を教えてるうちに、いつの間にか十五分が経過していた。そして、忘れたころにノアがやってきた。

 髪はロングヘア―で編み込みをしており、きれいに整えてある。それで時間を消費したようだ。

「本当にごめん!」

 ノアが来たので勉強道具をしまい、テーブルの上には三つのコーヒーカップだけ置かれている。

 ノアは土下座して謝った。もちろんテーブルの上で、だが。



 ――そして、今に至る。

 ノアの土下座した頭に、優の冷たい視線が突き刺さる。それを温かい目で見ているのは千穂理だ。

「ノア…君が遅れてくるまでの経緯を説明するために四〇〇字詰め原稿用紙八枚も使ったんだよ! どうしてくれるんだ!」

「ごめん、言ってる意味がわからない」

 僕はさっきまでの冷たい目をいつもの目に戻し、本題に入った。

「とまあ、冗談はここまでにしといて、早速お目当ての場所に行こう」

「え?」

 ノアは顔を上げ、許してくれるの!? といわんばかりの表情をしてから、みるみるうちにいつもの笑顔に変わっていった。

「それじゃあ…!」

「待って、お兄ちゃん。それじゃあ甘すぎじゃない?」

 そこに千穂理が口を挟んだ。

「お兄ちゃん…? 優君、どういうこと?」

 話を逸らしたいのだか単にその呼び方が気になったのか知らないが、ノアが僕を見て問うた。

「いやまあ、いろいろとありまして…最終的に決まった呼び方がそれになったわけ。あと千穂理、甘いならどうすればいいのかな?」

「千穂理!? 優君までそんな呼び方してるの!?」

 はい、スルー。

「単純に、怒るか叱るか説教しないと、また同じことになるってことだよ」

 怒るか叱るか説教て…全部似てるな。でもなあ、怒ったりすることできないし…時間減るし。

「確かにそうなんだけど、でも、説教したところで、ホントに変わると思う? 確信はあるの?」

「確信はないけど…でも、やらないよりかはマシじゃないかな?」

「そうだね。でもさ、説教されてこれから買い物行くより、気持ちは軽いんじゃないかな? …本人が罪悪感を持ってない限りだけど」

 僕はそう言ってから、ノアの顔を見る。

「え? いや、ホントに反省してるから! 罪悪感ありありだから! ごめんだから!」

 ノアは手を合わせて反省を表す。

 後半おかしいぞ。 

「それなら、千穂理。さっきお姉ちゃんのこういうところ可愛いって言ってたよね? 僕も同感だよ。だから、これを失くしたらノアの可愛いところが一つ無くなっちゃう。まあでも、僕は大丈夫だけど、他の人とのことで遅れたら流石に駄目だけどね。…ってことで今回は許そうって思ってる」

 予定より三〇分も遅れたけど、もう一ついいことあったし。

 僕は隣に座っている千穂理の頭にポンと手を置く。

「もう一つ、千穂理と話すことできたし、楽しかったから、許す」

 (ノア)から何かを感じ取った千穂理は、(ノア)に向かってビシッとピースをした。すっごい笑顔で。この笑顔からはいろんな意味が隠されているように感じられる。

 ノアは(ちほり)に悔しそうな顔をして、はぁ、と一息。

「優君、本当にありがとう。次からはちゃんとします」

「「次もあるの?」」

 僕と千穂理の声が重なった。

「ええ!? いや、その…私は行きたいよ?」

「まだ今日始まったばかりなのに次の話するんだね」

 千穂理は肩をすくめる。

「…じゃあ買い物行こうか」

「「はいっ!」」

 姉妹の声が重なったとき――

「店内ではお静かにお願いします」

 店員に怒られた。あと客の視線も痛かった。



 ――九時五〇分。

 でっかいショッピングモールへ到着。移動手段は自転車。

「はあ~涼しい!」

 店内に入ると、案の定、冷房がよく効いていた。

「あの、先言っておくけど、僕こういうところ全く来ないから、案内よろしく」

「え? マジで?」

 千穂理は驚きを隠せていない様子。

「マジだよ。確か…三年くらい前に来たのが最後だった気がする」

「結構前だね」

 あ、そういえば詳細全く聞いてなかった。

「ねえ、結局なんの店に寄るの?」

 ノアはアッと口を開け、

「ごめん、言い忘れてて! 今日はね、最初に本屋寄ってから、服と靴買って、お昼ご飯食べたら、ゲームセンター寄って…その後は決めてないよ」

「わかった。じゃ、早速本屋へ行こうか」


 このでっかいショッピングモールは地上一階から地上三階まであり(今日初めて知った)、三階とも全て店で埋め尽くされているらしいので、僕は正直お手上げだ。今僕を挟んで歩いているお二人さんは、このショッピングモールには何回も来たことがあるそうなので、案内を任せるしかない。任せるしかないのだが…千穂理は僕の手を握り、さらに僕にひっついて歩いている。なんで? 仕方ない…案内はノアに任せた!

 それにしても…本当に店がいっぱいあるな。今僕たちがいる一階には日用品や野菜売り場、パン屋、冷凍食品等の店がああるらしい。とりあえず目当ての品は一階(ここ)に無いことがわかった。

「千穂理…そろそろ離れてほしいんだけど…熱いし歩きにくい」

 そろそろ熱くなってきたので、千穂理に言わざるを得なかった。

「ひ、ひどい…けど、わかった。でも、手は握ったままでいいよね?」

 彼女は渋々承諾してくれたが、握った手だけは離してくれないようだ。

 エスカレーターに乗り、二階へ向かう。

「うん、それくらいならいいよ」

「それくらいって…結構勇気いると思うけど。それに周りから見るとすごくラブラブに見えるよ」

 ノアはエスカレーターに乗りながら、二人で並んで乗っている優たちを見た。

「私はお兄ちゃんとなら全然いいよ! …お姉ちゃんもしかして、お兄ちゃんと手繋ぎたいの?」

 千穂理は不敵な笑みを浮かべてノアを挑発した。なんともゲスいやつ。

「なっ! そ、そんな訳ないでしょ! もう、千穂(ちほ)ったら!」

 対してノアはまんまと挑発に乗り、顔を赤くしている。なんともチョロいやつ。

「二人とも、エスカレーター乗ってるときよそ見しないでよ。危ないよ」

「「はい…」」

 二人の声が重なったとき…エスカレーターに一緒に乗っていた人たちからクスクスと笑い声が聞こえた。


「やっと到着した。ここが本屋だよ――ってあれ? 優君?」

「お姉ちゃん、もう店の中に入ってるよ」

「ええ!?」

 僕が先に店の中で本を眺めてると、後から二人がやってきた。

「あれ? 何してたの? 遅かったね」

「優君が店に入るのが早すぎるの」

 ノアに怒られた。

「ごめんごめん。僕、本好きだからさ」

「へえ、そうなんだ。なんの本が好きなの?」

「うーん…料理のレシピ本とか…小説とか、かな?」

 学校で読むものといえばそれくらいだろうか。実際、レシピ本と小説が五対五くらいの割合で僕の部屋の本棚に入ってる。

「じゃあなんで、ラノベ見てるの?」

 そう、今僕はライトノベルが並べられているところで本を探していた。理由は簡単。

「昨日、クラスの友達に本が好きなら読んでみたらって言われたから、ちょっと見てみようかなと思って」

 昨日学校ですみれに言われてから、いつ行こうか考えてたら都合よく今日の買い物で本屋によることができた。

「へえ~、そうなんだ! 私も少しだけ読んたんだけど…えーと、これこれ! 面白かったよ! 八巻で完結しちゃったんだけど…ジャンルはラブコメだよ」

「何? ラブコメ? …LOVE米?」

 ごめん、わからない。

「し、知らないの!? いやまあ確かに米は愛するべきだけど…! ラブコメは、ラブコメディの略称で、主に恋愛なんだけど、そこにコメディ要素をぶち込んでくるっていう…まあとにかく、超面白いんだよ!」

 ノアはその本と顔を近づけて、熱心に語った。

「う、うん。だいたいわかった。じゃあその本見せて」

「はい」

 えーと値段は…五八〇円(税別)か。つまり、五×八=四〇円、八〇円は…六円かな? 足すと四六円、それを定価に足すと、六二六円か。全巻同じ値段のようだ。全巻買えるけど…これからいろいろ歩くからなあ…一巻と二巻だけ買おう。

「じゃ、買ってくる」

「行ってらっしゃい」


「ありがとうございました」

 さて、二人はどこに…あ、いた。そこは…芸術?

 二人の所まで歩いていく。

 金髪、目立ってわかりやすいな。そういや、千穂理は金髪じゃなくて赤っぽい髪だけど…だめだ、篠崎家の家庭はわからんな。ただ、一つの家庭で二人も美少女がいるってすごいことだなっていうのはわかる。

「芸術って…何見てるの? …デッサン? 水彩画?」

 僕は二人が持っている本を見て眉毛を寄せた。

「そう。言ってなかったけど。私たち、美術部に入ったの。その勉強のためにね、こうやって見てるわけ」

「へえ、美術部か…って、ノアは何で入ったの? 三年生の部員は一学期が終わる時に引退でしょ?」

「私たちが転校した学校でも美術部に入ってたからね。残り三か月しかないけど、楽しかったからね。またやろうと思って入ったの」

 ノアは見ていた本を棚に戻しながら答えた。

「なるほど。なら、二人とも頑張ってね。賞とか取ったら今度見せてくれ」

「「ありがと」」

 ほんとこの二人息あってるなあ…。声重なったの今ので三回だぞ? 流石姉妹だね。

「じゃあ私、これ買うから、レジに行こう」

 千穂理はそう言って、レジに向かって歩き始めた。

「ノアは買わなくていいの?」

「うん。欲しいの、無かったから」


「次は服買いに行くよ!」

「案内よろしく」

「はいはい」

 千穂理が言った通り、次は服を買いに行く。

 千穂理のテンションがすごく上がっているのは服が買えるからなのだろうか。

「早く行こうよ! 走っちゃダメかな?」

「千穂だめだよ、他の人の迷惑になるから」

 台詞(せりふ)だけ聞いてると普通の母子のような想像ができるんだけど…そうなると…。

「優君どうしたの?」

 気付いたらノアが僕を見て首をかしげている。

「いや、さっきの二人のやり取りが母親と子供のように見えてさ、この場合僕の立場はなんだろうって考えてみたら僕は父親になるなって思っただけ」

「私が母で優君が父…?」

 ノアは頬を少しだけ赤く染めて驚いている。

「ああー! お姉ちゃん照れてる! わかりやすいね!」

「ああ…うう…」

「早く行こうよ…」

 そんな感じでぐだぐだしてるうちに、お目当ての服が売っている店へと着いていた。


「お姉ちゃんこっちこっち!」

「こら、走らないの!」

 大変な妹をお持ちで…。歩いてついて行こうか。

 へえ…この店は男性物と女性物両方あるんだね。僕も新しいの買っておこうかな。五、六千円するからなあ…ちょっと抵抗あるけど…どうしようかなあ…。

 僕が買うか買わないかで迷っていると、耳にこんな会話が入り込んできた。

「俺これにするわ」

「じゃあ俺もそれと同じ種類にするぜ」

 …この声と仲良しさとしゃべり方は…まさか!

 僕は嫌な予感がしたので、その声がしたほうへと視線を向けた。

「マジかよ」

 そこにいたのは、予想通りとうふとわたあめだった。

 考えろ。このまま見つかったら、どうなる? それでノアが話しかけてきたりしたら、学校でどうなるかわからんぞ!? これは見つかる前に逃げなければ…。

 僕は一旦、とうふとわたあめの目の届かないところに移動した。

 ノアと千穂理を探そう。どこにいる?

「お姉ちゃん、これどう?」

 ん! その声は千穂理だな?

 僕はその声がした方へと足を速めた。

「おっ」

「あ、優君」

 ノアと千穂理がおり、そこでは千穂理が試着をしていた。

「お兄ちゃん、これ可愛い――」

「ごめんけど、他の店行くよ。ノア、スマホとか持ってる?」

「うん、持ってるけど…なんで?」

「説明してる暇はないんだ。あとで教えるから。じゃあノア、電話番号教えるから――」


 ――『買い物が済んだら電話してくれ』

 とは言ったものの、一体どこで待てばいいんだろう。なんかいいところないかな?

「ん?」

 肩を叩かれた気がしたので、振り向いた。

「よ」

「珍しいね、こんなところにいるなんて」

「…え?」

 何を隠そう、そこにいたのは(はやと)(はなぶさ)さんだった。


 え? 何? なんか怖い。

読んで頂いて感謝します。

今回は前編として書きましたが、どうでしたか?

襲い掛かる(そこまで襲ってないけど)危機を、優はどうやって乗り越えるのでしょうか。

次話もお楽しみに!

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