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腹黒マーハ




 市場についた。

 エルクラークの市場は、かなり大規模である。

 商工都市、交易都市、水の都と様々な名を持つエルクラークだが、そのせいか人がかなり多い。恐らく他の街からやってきた商人とか武芸者とか工匠とかがかなりいるんだろう。観光目的の人もいるかもしれない。


「ほぅ。ここが市場か」


「クノは初めてきた?」


 物珍しげに市場を見ていたクノに質問を投げかける。


「エルクラークの市場は初めてじゃ。しかし、なんとも賑やかな場所じゃの。さすがは商人の街でもある場所じゃ」


「わたしも最初に来た時は驚いたよ。祭りでもあってるのかと思ったし」


 人でごった返す市場は、エルクラークの繁栄を表しているかのようだった。


 これだけ買い物客がいるのなら、経済は安定だろうな。

 買って買って買いまくった方が景気はよくなる。お金が回るからだ。


「さて、見て回るとするかのぅ。目的はあるのか?」


「一応ね。まずは適当に見て回ろうか。売ってあるのは食材だけじゃないしさ」


「うむ。そうするとしよう」


 女の子2人(魔族と妖孤)で、市場を歩き回る。

 おれは腰に帯剣しているので、変なゴロツキにちょっかい出されることも多分ない、と思う。


 ない、と思っていたんだけどなぁ。


「おうおうお嬢ちゃん達よ、パパとママはどうした~?」


 ガタイのいいジョブをきいたら戦士と返ってきそうな大柄の男が、唐突に絡んできた。ねっとりボイスとねっとり視線。牢屋で出会ったあの名匠のおじさんのようだ。


「ぬ、いきなりなんじゃこやつは」


「おおう? なんか偉そうな子だなおい~? 年上の人は敬うものだとパパとママに習わなかったか~?」


 近い近い。男の顔が近いよ。

 そこまで覗き込むようにクノの顔を見なくてもいいだろうに。


「マーハ、わらわはどうすればいよい?」


 ちらっとこちらを見てきいてくるクノ。

 まあ、どう見ても失礼なやつだもんなぁ。

 だけど、往来の真ん中で妖術を使うほどクノもバカじゃない。


「ここは穏便に済ませよう。わたしに任せて」


 クノを下がらせ、おれは前に出た。

 クノには穏便に済ませようと言ったが、おれには作戦があった。この人が想像通りの人で、なおかつ上手く行けばホクホクになれる可能性があるのだ。


「あ、あの……」


 体格差がありすぎるため、おれは眼前の男を見上げる形になる。


「わたしにパパとママはいません……。だからわたしがママの代わりに食材を買いにきたんです」

 

「ぬ、両親はいないのか。どうしているのだ」


「魔物に襲われて亡くなってしまいました。だから、料理も洗濯も、わたしがしています。1人ですから」


 1人という点を強調して言うと、男は腕を組み目を閉じた。

 ひとしきり思考した後、男は、よし、と言い目を開けた。


「そういうことならこの俺が食材を買ってやろう。その腰の小太刀も自衛のためなんだろう? すまなかったなお嬢ちゃん。ガキが生意気にも帯剣しているかと思ってちょっかい出してしまった。事情も知らなかったとはいえ、悪いことをしたな」


 急に大人しくなった男。

 にしてもチョロいなおい。

 案外情に厚い人間ばかりで助かりますよ~。


「いえ、そんなことは」


「いいやおれが悪かった。それで今日は何を作るんだ? 食材は何がいる?」


「そこまでお世話になれません。お気持ちだけで大丈夫です」


「いいから、な。じゃないと俺の気もおさまらない」


「……わかりました。そういうことならお言葉に甘えようと思います」


「おう、任せておけ!」


 こうして、難なく食材を手に入れることが出来た。

 さすがにたくさん要求するわけにもいかないので、適当な量を買ってもらって、男が満足した所で別れた。終始クノが呆れていたのがちょっとおもしろかった。


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