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優しい案内人

夜道で、道に迷った。


住宅街は似たような道ばかりで、どこを曲がったのか分からなくなる。


スマホの地図も、なぜかうまく表示されない。


困っていると、声をかけられた。


「どうしました?」


振り向くと、男の人が立っていた。


柔らかい笑顔。


穏やかな声。


どこにでもいそうな、優しい人だった。


「駅に行きたいんですけど……」


そう言うと、男はすぐに頷いた。


「ああ、案内しますよ」


「この辺、分かりにくいですから」


安心した。


一人で歩くより、ずっと心強い。


男はゆっくり歩きながら、いろいろ話しかけてきた。


仕事のこと。


住んでいる場所。


最近のニュース。


不思議と話しやすくて、気づけばかなり歩いていた。


「もうすぐですよ」


男が指さす。


暗い道の先に、ぼんやり灯りが見えた。


「ありがとうございます」


頭を下げる。


男は、優しく笑った。


「いえいえ」


「困ってる人を助けるの、好きなんです」


その言葉を聞いたとき、


ふと、違和感が浮かんだ。


「……あの」


男は首を傾げる。


「はい?」


「ここ、どこですか?」


男は少しだけ笑った。


「帰り道ですよ」


「帰り道?」


「はい」


穏やかな声で言う。


「ここから先は、みんな帰れるんです」


その瞬間、


背中がぞくっとした。


「みんな……?」


男は頷く。


「迷っている人は、よく会うんですよ」


「だから案内してあげるんです」


優しい笑顔。


「帰れるように」


足元を見る。


そこは――


線路だった。


振り向く。


さっきまで歩いてきた道が、見えない。


暗闇だけが続いている。


「安心してください」


男が肩に手を置いた。


温かい手だった。


「大丈夫」


「みんな、帰れてますから」


男は優しく笑った。


「あなたも、もうすぐです」

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