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【証拠はいらない×ホラー】夜の記憶がない相談者
事務所のドアが開いた。
「……相談、いいですか?」
入ってきたのは若い男だった。
俺は言う。
「どうぞ。愚痴でも人生相談でも歓迎」
男は椅子に座る。
少し迷ってから言った。
「最近」
「記憶が抜けるんです」
「どんな?」
「夜の記憶です」
沈黙。
「気づくと朝なんです」
「何かした覚えは?」
男は首を振る。
「ありません」
男は言う。
「でも」
「ニュースを見ると怖いんです」
「なぜ?」
男は小さく言った。
「人が死んでるから」
沈黙。
男は続ける。
「もし」
「自分だったらと思って」
しばらく話を聞いた。
帰り際、男は言った。
「ありがとうございました」
「少し安心しました」
男は帰っていった。
ドアが閉まる。
相棒が言う。
「何の相談?」
「記憶がないって」
テレビをつける。
ニュース。
「昨夜、男性が刺され死亡しました」
相棒が言う。
「最近多いわね」
俺はコーヒーを飲む。
机を見る。
来訪者記録。
そこに書かれていた。
相談内容
人を殺しているかもしれない




