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風呂の栓を抜いたのに、お湯が減らない
風呂の栓を抜いた。
ごぽ、と小さな音。
水はゆっくり減っている。
排水が遅いのかもしれない。
まあいいか、と思った。
そのまま風呂場の電気を消して、寝た。
⸻
次の日。
洗面所に入って、ふと浴槽を見る。
昨日の湯が、そのまま残っていた。
水面は、昨日と同じ高さ。
栓は抜いたはずだ。
もう一度、栓を持ち上げてみる。
ちゃんと外れている。
おかしい。
⸻
しゃがんで排水口をのぞく。
黒い穴。
暗くて何も見えない。
詰まりだろうか。
手を入れてみる。
ぬるい水。
排水口の奥を探る。
何もない。
そのとき。
指先に、何かが触れた。
やわらかい。
髪の毛かと思った。
もう一度触る。
違う。
細い。
指みたいな感触。
⸻
思わず手を引っ込める。
水面が揺れる。
しばらく見ていると、
排水口の奥から
水がゆっくり押し返してきた。
少しだけ、水位が上がる。
蛇口は閉まっている。
それでも、水が増える。
⸻
ごぽ。
排水口の奥から、音がする。
ごぽ。
もう一度。
水面が、小さく揺れる。
耳を近づける。
排水口の奥。
暗い穴の中から
ゆっくり、
空気が出てくる。
ごぽ。
ごぽ。
まるで、
下で誰かが息をしているみたいだった。




