涼風重蔵という陰陽師
「真広くん!きたよ!」
「えっ?なにしにきたんですか?」
校門で葉月桔梗さんが出待ちをしていた。
「なんで学校にきたんですか!?家にきてください!」
一緒にいた琴巴が問い立てた。
ん?じゃあ、僕に会いに来たんじゃないか?
「お母さんは琴巴ちゃんの家で秀一様と家で話してるよ。」
「いや、あなたも家で待っててくださいよ!」
「いや、今回の任務、真広くんも誘おうと思って!」
「真広くんも?」
「うん!今回の任務の統括をするお母さんもいいって!」
「そりゃ、真広くんが来てくれる分にはいいけど…真広くんも来てくれる?」
そう言って琴巴がこちらを向く。
「えっ?どうしようかな。とりあえずどんな任務なの?」
「今回はね、すごく大きな任務になるかもしれないよ?今回の任務は堕ちた土地神の討伐。古い土地神が堕ちたからどのくらい強いのかもわからない。だから今回は葉月家の当主の私のお母さんを筆頭にして、万全を尽くして一級対応の大部隊でいくんだよ。」
僕の問いに桔梗さんが丁寧に答えてくれた。
「一級対応!?」
「うん。まぁ一級と戦うとなったらどれだけ戦力を整えても勝てるかどうかなんてわからないけどね。」
琴巴が疲れたように答える。
ぬらりひょんと出会ったときを思い出し納得する。
「行ってきていいですよ?」
後ろから冴久先生が歩いて来た。
「えっ?」
この人いつもタイミングよく来るけど…もしかして僕見張られてる?
「実践も大切ですしね。それに、今回いろんな陰陽師のプロも見れるでしょうしね。」
「じゃあ決まりね!真広くんの師匠がオッケー出してくれたし!」
あれ?僕の意思は?
「じゃあ、家で待っててね!迎えにいくから。明日からの2泊3日の任務予定だから明日からの土日無くなっちゃうけど、ちゃんと給料出るから許してね。」
あれ、なんで僕の家を知ってるんだ?
なんか、こわいな…
ん?給料?
「えっ!?給料でるの!?」
「当たり前じゃない。仕事だもの。」
琴巴がなにいってるの?という感じで答える。
「準備しておきます。お願いします!」
お金が出るならがんばろう。
「あはは。現金ですねぇ。あと、」
冴久先生はそういうと僕の耳元でに近づいてきた。「神力は使っちゃダメですよ?葉月心さんレベルだとすぐにバレてしまいますからね。危なくなったらすぐ逃げなさい。」と小声で言って来た。
それから家に帰って待っていると僕の家の前にリムジンが一台と黒い車が数台止まったので家を出た。
「なんで毎回リムジンなの?」
「えっ?楽じゃない。」
僕の素朴な疑問に琴巴が答える。
やっぱお金持ちだなぁ。
「真広くん会いたかったわよ!」
リムジンに入ると、座っている葉月心さんがそう言った。
「お久しぶりです。」
「驚いたわよ!あなた重蔵さんのお孫さんなんだって!?」
あっ、そうじゃん。名前も住所もバレてたら、おじいちゃんのこともバレるに決まってるじゃん。
「え、ええ。まぁ。」
「すごいわねぇ。やっぱり家に来て欲しかったなぁ。よりにもよって蘆屋冴久なんて得体の知らない奴に弟子入りしなくてもいいのにぃ。今からでも私の弟子にならない?よくしてあげるわよ?」
「あはは。ありがとうございます。」
やっぱ得体の知れない奴って思われてるんだ。
「私、あいつのあの嘘っぽい笑い方大嫌いなの。顔はいいけどね!あっ、ごめんね。師匠のこと悪く言ってしまって。」
「いえ、大丈夫です。」
むしろもっと言ってください。日頃の修行の恨みです。
「真広くん!お爺さんのこと聞かせてよ!車の時間かなり長いし!」
心さんの隣にいる桔梗さんがそう言って前のめりになる。
やばい、胸に目がいってしまった!
「私も聞きたい!」
琴巴も興味深々で聞いてくる。
「えっ?おじいちゃんのことについて?んー。でも、僕、おじいちゃんが陰陽師だって知ったの最近だしなぁ。裏山によく山菜取りに行ったこととか遊びに行ってくれた優しかった普通のおじいちゃんの姿しか知らないんだ。」
そういえば、おじいちゃんの陰陽師の姿のことなんにもしらないなぁ。みんなからすごいすごいと言われるけど見たことないし、あの優しいおじいちゃんがあやかしと戦ってる姿想像できないなぁ。
「えっ!?そうなの?」
桔梗さんが驚く。
「じゃあ、私が教えてあげましょうか?あなたのお爺さんのこと。」
心さんがそういう。
「えっ?僕のおじいちゃんと会ったことあるんですか?」
「あったりまえよ!すごい人だったのよ?あなたのお爺さん涼風重蔵と清華玄治、そして琴巴ちゃんのお爺さん立花秀一の三人が最高の陰陽師と謳われていたわ。でも、その中で1番強かったのが真広くんのお爺さんの涼風重蔵よ。」
「へぇ、そうだったんだ。」
やっぱり実感湧かないなぁ。
「重蔵さんはね。シンプルに強かったわ。それも圧倒的に!凄まじい身体能力に精密な術に高密度に練り上げられた霊力。最強の陰陽師だったと思うわ。」
「お母さんがそんなに褒めるなんてほんとに凄かったんだねぇ。」
「うん。彼は凄すぎたわ。特に凄かったのは赤舌討伐戦。私も参加したけど。あの戦いには今の私でも入れないかも知れないわね。当時の私には赤舌の百鬼夜行の雑魚を倒すくらいしかできなかったわ。」
「今の心さんでも入れないかもしれない戦いって…」
琴巴がそう言ってゴクリと唾をのむ。
「赤舌は本当に強かった。赤舌の百鬼夜行の幹部もね。赤舌は当時任務の大将の重蔵さんが幹部は秀一さん玄治さんが戦ったわ。もうね、みんなぼろぼろよ」
「赤舌…そんなにやばいなら今回の落ちた土地神がもし一級だったらもしかして…」
僕は思わず不安が声に出てしまっていた。
「ふふっ。同じ一級でも天と地の差があるの。一級より上は細分化されてないの。赤舌レベルの一級はそうそういないわ。でも、今回落ちてしまった土地神はかなり古くからいた土地神だから油断はできないわ。」
「話を戻すわね。重蔵さんの身体能力は正直人外だったわ。おそらく何らかの術を使っていた。私たちも霊力を纏ってある程度は力も強化されるし攻撃も跳ね返すけど、重蔵さんが纏っていたのはなにか体に纏う結界のような、オーラのような物を纏っていて、霊力を纏っているだけでは説明のつかない人外の力を使っていたわ。なにか知らない、真広くん?」
あっ、この人これを聞き出すのが目的だ。
んー、おじいちゃんがそんな術使ってるの見たことないなぁ…
ん、待てよ。
僕は冴久先生が僕と1番最初に戦った時を思い出した。
クロたちの攻撃をものともしない防御力や超常的な力。
なにより身体に纏っていたオーラ。
あれ?冴久先生?
「ん?なにか心当たりがあるみたいね?」
どうしよ。言っていいかな?
僕は少し考えて…
「冴久先生が同じような術を使っていたような気がします。」
言ってみた。
「あいつが?重蔵さんの弟子だったということ?いや、でもそんな噂もなかった。そもそも戦い方が違いすぎる。真広くんなにか聞いてる?」
「いや、特に。ただ僕を育ててくれるのは君のお爺さんへの恩返しでもあると。」
「なにかつながりはあったのは間違いないようね。まぁ、わからないことはわからないわ。やっぱりあいつ得体がしれないわね。」
「ね、ねぇ、真広くん聞いてもいいのかわからないけど、重蔵さんの手がかりってなにかあるの?」
琴巴がそんなことを聞いてくる。手掛かり?いや、手掛かりもなにも…
「おじいちゃんは山火事で焼死したんじゃ?」
「「「え?」」」
車に3人の困惑の声が響いた。




