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いきなり土地神になっちゃった。あやかしには狙われるけど意外と楽しいです。  作者: マロ


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堕ちた土地神の力

「待って?重蔵さんは任務で行方不明になって見つからないから死亡扱いになってるんじゃないの?」


心さんが驚いて聞いてくる。



「えっ?僕はお父さんから山火事で焼死して死体も見つからなかったって聞いたけど…あっ、もしかしたら、お父さん達があやかしの世界に関わって欲しくないからそういうことにしたのかも。今まであやかしの話とか聞いたことなかったし。」


「あー、なるほど。確かにそうかもね。」

琴巴がなるほどって顔で納得する。


「結局なんにもわからないのかー。」

桔梗さんががっかりしたように背もたれに体重を乗せる。



そうこう話している内に一つの大きな山の麓に着いた。

周りにもかなり多くの車が停まっており、人も多い。


「ここが?」

僕が心さんに尋ねる。


「ええ。この山の中にある廃社にいる者が今回の目標よ。私は他の家と少し打ち合わせしてくるから少し待ってて。もうほとんど決まってることを確認するだけだから、すぐ任務が始まるわ。みんなも準備を進めててね。」


「緊張するね。」

琴巴がうつむきながら言う。


「そうだね…」

多分僕は琴巴よりも緊張しているだろう。

なぜなら、僕は土地神。そしてこれから討伐に行くのは堕ちた土地神。


もしかしたら僕も…



「二人とも緊張し過ぎだよー、今回私たちは結界の維持とかの後方支援だよ?戦うのはお母さんをはじめとした上級の陰陽師だよ?」

桔梗さんは笑いながら言った。


そうなんだ。僕たちするのは後方支援か。

ちなみに張る結界の目的は敵を弱らせることと、敵を外に出さないこと。

複雑な結界の構築はそれ専用の陰陽師のチームがいるらしいので僕たちは結界に必要な霊力を散らばって各地から補充するらしい。


僕たち3人の札や装備の最終チェックがおわった頃。


「皆さん。これより山中に入り、廃社にて堕ちた土地神の討伐を開始します。想定最高難易は一級を想定して任務に当たります。心してかかるように。では出発します!」


心さんが用意された壇上にあがり任務開始に号令をかける。



僕たち討伐隊は何のトラブルもなく山中を進んでいく。


そして山の中腹のかつては立派であったであろう大きな鳥居についた。

鳥居は朽ちて崩れており道もガタガタに壊れている。


そしてとても嫌な感じがする大きな気配を感じる。


「みなさんすぐに散らばって結界を張ってください。」

心さんが声を張る。


僕たちを含むたくさんの陰陽師が社を囲むようにして散らばり、社を覆う大きな結界を張る。


「なんでみんな同じとこくるの?散らばった方が良くない?」


「「咄嗟に来ちゃった。」」


まぁ、いいか。助け合いをできるようにってことで。


僕たち3人は全体が見えるように大きな岩の上に登って結界の維持に加わる。


「いいところに来れたね。」


桔梗さんが社を見下ろしながらそういう。


「うん、ここなら心さんたちの戦いもよく見れそう。」


心さんを先頭に上級の陰陽師10人が境内に入り壊れた道を進んでいる。


そして大きな社の前についた。


すると社の扉が開き何かが出てきた。


出てきた途端周囲の雰囲気が変わった。


暗く体にまとわりつくような嫌な妖気が立ち込める。


「これは2級以上は確実だね。」

桔梗さんがそうつぶやいた。


これが堕ちた土地神…


外見は長い髪をした薄汚れた白い着物着た女性だが明らかに人ではないのがわかる。もはや神力も感じられず嫌な妖気を発している。


こころさんが札を取り出し式神を呼び出した。

4本の尾をもつ大きな狐だ。


「お母さん本気だ。月狐を呼び出すの久しぶりに見た。」


「月狐?」

琴巴が桔梗さんを見る。


「うん。満月の時には3級の力を持つ強力なお母さんの式神だよ。」


3級の式神!?す、すごいな!


「3級!?そんな高位のあやかしを式神にするなんて、心さんやっぱり化け物だ…」


「うん。他の家にもあまり知られていないお母さんとっておきの式神だよ。普段は4級だけどね。」


そうこう話しているうちに状況が動く。


先手は堕ちた土地神の攻撃。

地面を棘状になり討伐隊を襲う。


もちろん凄腕の上級陰陽師のみで構成された心さんの部隊はだれひとり傷つくことなく避ける。


月狐が反撃し狐火を飛ばすが土の壁に阻まれる。


他の陰陽師も強力な術を放つが土壁で阻まれる。


あれは絶対土の硬さではない。堕ちた土地神の力で強化されている。


「さみ…しい」


けして大きな声ではない。でも、ここまで確かに聞こえてきた。


「なん、で…?」


その言葉には確かに憎しみがこもっていた。


「殺す。…ころす!」



なんと堕ちた土地神の力が急激に増した。


「各々一番強い攻撃をしなさい!」


心さんの急激に力が増して焦ったのか一斉攻撃の命令を下す。

確かにこれ以上強くなっては手に負えなくなりそうだ。


戦いに加わっている上級陰陽師たちが各々最強の術を繰り出し大きな爆発が起きる。


一斉攻撃を見て黒笠の悪舌を思い出す。


正直悪舌の方が術の数も多く威力も上だった。

あいつマジで強かったんだな…強かったなぁ…負けたしな。


まぁ、何が言いたいかというと。おそらくこの威力ではあの堕ちた土地神は仕留めきれない。


砂埃が晴れるとやはり無傷の堕ちた土地神がいた。


「あぁ…ああぁああぁあ!」

堕ちた土地神は頭を抱えて叫び出した。


「たす…けて。ころ…し…」


さっきよりもさらに力が増したが、ほんのかすかに言語に理性が見えた。


それにしても「助けて」か…そのあとの言葉は多分「殺して」かな。


もとは素晴らしい神だったのだろう。社も大きく人々からも信仰も集めていたのだろう。なんで彼女は堕ちたしまったのだろうか…


「一度体制を立て直します。退却。」

どんどん力を増していく敵を前にして心さんは一時撤退を選んだようだ。


しかし、彼女はそれを許さない。


堕ちた土地神は地面に触れるとなんと地面が軟化して退却していた陰陽師たちが地面に沈んでいく。


心さんは一反木綿を呼び出し、その一反木綿に乗り難を逃れる。月狐も飛び上がり空に逃げる。

他数名の上級陰陽師たちも空を飛ぶ術や式神を使い空に逃げる。


だが、その手段を持たない上級陰陽師たちはどんどん地面に沈んでいき身動きを取れなくなってしまったところを大きな土の棘が体を貫き血をまき散らし絶命する。


「あぁ!あああああ!」

彼女は自分が殺したにもか関わらず、殺してしまった事実に苦しんでいるように感じる。


「お母さん!!」

桔梗さんはあまりの事態に今にも泣きだしそうだ。


「くっ!このまま退却します。」

残った上級陰陽師達を率いて心さんたちは退却していく。


「助け…て…え?」

こちらを向いた。

そして距離があるにも関わらず僕と目があった。


「あ、あなた様は…お助けくだ…さい。お、おた…す」

そういいながらこちらに向かった来る。

それもダッシュで。

や、やばいー!こっち来た!


「ね、ねぇ、こっち来てない?」

琴巴が震えながらつぶやいた。


「逃げよう!」

僕はそう言い結界とのつながりを断った。僕たち三人が抜けたくらいでは結界は消えない。今は逃げるのが先決だ。


「なぜそっちに行くの!?」

心さんも僕たちの方に向かってきているのがわかり困惑している。


「月狐最大の狐火を放ちなさい!」

月狐は大きな強力な狐火を放つが堕ちた土地神は意に介さずこちらに向かってきている。


ー真広!ここで神力を使ってはダメです。もっと早く逃げてくださいー


分かってる!けどあいつすごく速い!僕一人なら正直、神力なしでも逃げ切れる。内包する霊力を考えればおそらく桔梗さんももっとスピードが出るだろう。

しかし問題は琴巴だ。彼女はこれ以上スピードが出せない。このままだと追いつかれる。桔梗さんも同じことを考えているのか表情が暗い。

僕が召喚した式神に乗せることを考えるが、僕の金魚ちゃんたちは大きくなっても意外に速くない。

仕方ない。あいつを出そう。あんまりここで見られたくないけど…


「出て来い白色」

僕は札を取り出し、白い大きなヤモリのあやかし。白色を呼び出す。実はこいつ結構早い。コイツはミケと同じ5級上位の実力を持つ。さらにここは森の中だ。ミケより白色の方がはるかに早く動けるだろう。


「うわぁ。呼び出しやがった。ミケのやつを呼んでくれませんか?ってなんかすごいやばいのがこっち来てませんか!?」

ほんとミケと白色のこのやる気のない感じ癪に障る。二人とも実力もあるしすごく頼もしい味方なのになぁ。


「すごくきれいな式神!それも強そう!!これが琴巴ちゃんが言ってた真広君の式神ね!」

桔梗さんがキラキラした目で白色を見る。


「はぁ、はぁ、違う…猫のあやかしだった…五級以上の式神2体目…」


「えっ?」

桔梗さんが僕を見る。


「とりあえず二人とも白色に乗って!もう結界ギリギリまで来てる!」


「え!?俺に二人も乗るの?重いなぁ。」


「おい。失礼だぞ。それに僕も乗るから3人だよ。」


「え~、それミケも呼んでくださいよ。」


「文句は後できくから!」


バキン!!


なんと巨大な土の棘で結界は簡単に破られてしまった。



「速い!」

琴巴は白色の速さに驚いている。それはそうだ。

こいつは森の中では無類の速さを誇る。風のように森を駆ける。


しかし、それでも相手は一級。

それも今、確実にこちらの想定以上の強さ。

今もなお力が増していっているのを感じる。


これは、いずれ追い付かれる。

後ろから心さん達が止めようと追いかけてきているが、だんだん離されている。


ちなみに、追い付かれたらこのレベルの相手神力を使わずに相手をすることは不可能だろう。

いや、神力を使ったとて勝てるかどうか…



「やばい!もう後ろまで来てる!」

心さんが後ろを向いて札を構える。


これは…覚悟を決めて戦うしかないか?

二、三分足止めできれば心さん達も追いついて一緒に戦うことができるだろう。

しかし、それまでに2人を守りきれるかどうか…


ー助けてほしい?ー


え?誰?



霞とは違う女性の声が僕の頭に響き渡った。




誤字修正いつもありがとうございます!


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