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ホームレス少女  作者: Rewrite
花里桜編
97/234

27話

 

 お祭りの開催されている神社までやってくると、すでに神社はにぎわっていた。

 たくさんの浴衣を着た老若男女、おいしそうな匂いを漂わせる屋台、楽しそうに走り回る子供たち。どこを見ても幸せいっぱいだ。

 どこから回ろうか目移りして迷ってしまう。

 おっと、本来の目的を忘れそうになってしまった。

 ここに来た本来の目的は楽しむことはもちろんだが、一番の目的は桜ちゃんと奏ちゃんの仲を戻すことだ。

 この優先順位は絶対に揺るがない。


「なあなあっ。早く回ろうぜ。俺もう腹減っちまってよ」


 翔君が待ちきれないとばかりにその場で足踏みをしだす。

 でも、それも仕方がないように思う。

 目の前でこんな楽しそうなことをやっているのだ、見てるだけで我慢しろという方が無理というものだ。


「私もこの右手が疼いて仕方がないでありますよ。早く……早く射的を欲しいでありますっ」


 山中君も珍しくはしゃいでいるようだ。

 銃を構えるような格好で、すでに射的をやる気満々である。


「そうね。他のみんなも早く行きたいでしょうし、さっさと私たちも混ざりましょ」


 間宮さんの言葉でみんながお祭りの中へと足を踏み入れる。

 本当に先生みたいだな間宮さん。

 みんなが笑顔でお祭りの中へと混ざっていく中、僕は桜ちゃんと奏ちゃん以外のみんなに携帯でメッセージを送った(安藤さんとも番号を交代済み)。


 みんな、昨日言ったようによろしく!


 このたった一言を送った。

 昨日みんなの部屋を回って協力をお願いしたとき、このお祭りでしてほしいことを頼んでおいたのだ。

 みんなの顔を一通り見回すと、みんなが小さく頷いた。

 さあ、ここからが本番だっ!


「おいっ広志っ、見てみろよ。絶対に落とせない射的だってよ、。たまにお前が着るみたいな軍服来てる連中が苦戦してるぜ。俺らで全部落としてあの店潰しちまおうぜっ」

「うむっ。私にかかれば朝飯前どころか昨日の晩飯前でありますよ。いくぞ翔、私たちの力でこのお祭りの射的やすべて潰そうではないか」

「おっしゃーっ。のってきたぜーっ!!」


 二人で話をしていたかと思ったら、翔君と広志君が勝手二人で離脱した。

 人ごみの中をすごい勢いで走っていくので、僕らにはとても追いつけない。

 気が付けば二人の姿は見えなくなっていた。


「す、すごいスピードで行っちゃいましたね……」


 呆然と立ち尽くす彼方ちゃん。

 他のみんなもその場に立ち尽くしていた。


「まあ、携帯でいつでも連絡取れるでしょ。私たちは私たちで楽しみましょ」

「そうですね。そういたしましょう」


 こうして僕らは翔君と広志くんが抜けた状態で歩き出した。


「わあー。私ここまで大きい規模のお祭りは初めてかもです」


 彼方ちゃんが瞳を輝かせながら言った。


「僕もだよ。小さなお祭りなら何度か行ったことあるけど、ここまで大きなお祭りは初めてだよ」

「すごいですよね。こんなにいろんなお店があるとどこから行くか迷っちゃいますよ」


 照れくさそうに笑う彼方ちゃん。

 楽しそうで何よりだ。


 こんな感じで途中途中、色々なものを買いながら僕たちはお祭りの中間くらいのところまでやってきた。


「ねえ佐渡」

「ん? なに間宮さん」


 呼び止められたので、その場で止まる僕。


「私ちょっとお花を摘んでくるわ」

「あっ。私も行きます」


 間宮さんに同調して彼方ちゃんも手をあげながら言う。


「……いいけど。この辺りに花なんて咲いてたっけ?」

「「「……」」」


 みんながみんな凍り付いた。

 というか呆れ顔で僕を見ている気がする。

 なんで?

 僕が本気でわからないことを悟ったのか。安藤さんがさっと僕の近くまでやってきて、「少しお耳を」と、言った。

 僕は言われた通りに少し安藤さんの方に体を傾ける。


「佐渡様、お花を摘みに行くというのは隠語でして、本来の意味はトイレに行くという意味です。女性の方はトイレというのが上品ではないので、こういう言い方をされる方もいます」


 安藤さんが小声で教えてくれたのでさすがに僕も察した。

 いかに僕がバカなことを言っていて、女性人に対して失礼なことを言ったのか理解した。

 恥ずかしさでもう死にたい。


「……ごめん間宮さん。彼方ちゃん……」

「……いいわ。私も悪かったわよ……」

「気にしないでください。知らなかったんなら仕方ないです」


 どうにか間宮さんにお許しを貰い、彼方エンジェルも許してくれた。

 本当にありがとう二人とも。


「それじゃあ行ってくるわね。行きましょ彼方ちゃん」

「はいっ。間宮さん」

「そうだ佐渡、私たちは後で合流するから先に行ってていいわよ。楽しそうにしてる奏ちゃん待たせるの悪いもの」

「なっ、間宮、私は別に待ちきれないとか子供みたいなことは言ってないわよっ」

「あらそうだった? でも、本当に先行ってていいわよ。結構並んでるからどれだけ時間かかるかわからないしね。気にせずに行きなさい」


 そう言った瞬間間宮さんが僕の方を見て、一瞬ウインクした。

 きっと先に行きなさい、という間宮さんの合図だ。


「わかったよ間宮さん。二人には悪いけど先に行かせてもらうよ」

「そうそう。そうしなさい。じゃあ今度こそ行きましょうか彼方ちゃん」

「そうですね。それじゃあ佐渡さんまた後で合流しましょうね」

「うん。二人も気を付けて」


 手を振って別れて、この場には僕と桜ちゃん、奏ちゃん、安藤さん……ってあれ?


「あれ? 安藤さんがいない」

「え? あっ、本当ですね。いつの間にかはぐれてしまったんでしょうか?」


 桜ちゃんも僕と同様に周囲を見回す。

 メイド服なのだからこの中では目立つはずだが、これだけの人数がいれば、そんな目立つ格好もあまり意味をなさないようだ。

 どうしようかと悩んでいると僕のポケットの携帯が震えた。

 ポケットから携帯を取り出してみるとメッセージが一件入っている。

 安藤さんからだ。

 内容は「私は九重様たちと合流いたします。後はお任せしました佐渡様」とのことだった。

 なるほど、わざとはぐれてくれたのか。

 でも、これで作戦準備は整った。

 僕が昨日頼んでおいた、お祭りでそれとなく僕と桜ちゃんと奏ちゃんが残るようにセッティングしてほしいという願いはかなった。


「今メッセージがあって安藤さん心配だから翔君たちと合流するって」

「そうだったんですか。それなら安心ですね」

「そうね。だったら早く行きましょう。さっきからあのふわふわしたのが気になって仕方ないの」


 そう言って奏ちゃんが指さしたのは近くの子供が持っていた綿あめだった。


「あー。綿あめか。それならあそこで売ってるよ。買おうか? ……ってあれ?」


 奏ちゃんがいたはずのところを見ると姿がない。

 まさかこの一瞬で迷子に!?

 そう思っていたら桜ちゃんが僕の浴衣のすそを掴み、ある方向を指さした。

 そこには既に綿あめを買った奏ちゃんの姿が。

 よかったー。





「佐渡っこれがお祭りなのねっ。なんでこんな楽しそうなことを私に今まで黙ってたのよっ」

「別に黙ってたわけじゃないよ。言う機会がなかっただけで……」


 お祭り初めての奏ちゃんのテンションが高い。

 僕だってさっきから気持ちが高ぶって仕方がないのだから、お祭り初めての奏ちゃんはますますだろう。

 さっきからキョロキョロとどこを見たらいいのか困っている様子だ。


「お嬢様が楽しそうでなによりです」


 なんと桜ちゃんの方から奏ちゃんに話しかけた。

 僕も少しびっくりして桜ちゃんの方を見る。

 すると、緊張しているのか、それとも怖いのか、手が震えていた。


「そうね。こんな楽しいの久しぶりだわ」


 奏ちゃんも笑った。

 この調子なら、今回の件の解決は近い。


「あっ。見てくださいよ佐渡さん、ミスコンテストやるらしいですよ。出てみたらどうです?」

「なんで僕が出るのさっ。出るなら桜ちゃんと奏ちゃんだよ」

「えー。出ませんかー」

「僕はミスじゃなないからね……」

「ミスコンテストってなんなの?」


 両手いっぱいに食べ物を持った奏ちゃんが口に食べ物を入れながら会話に参加してきた。

 どうやらミスコンのことを知らないらしい。

 まあ、僕も知ってはいたものの企画自体を見るのは初めてだ。


「簡単に言うと出場者の中から一番可愛い、綺麗な人を決める大会みたいなものかな。もし出たいならエントリーしてみる? 二人ならいい線どころか優勝しちゃうかもよ」

「そうね。確かにここで私の美しさを佐渡に教え込むのも良いかもしれないわね。まあ、私が出たら私が圧倒的大差で優勝しちゃうでしょうけどね」


 自信満々に腰に手を当て、始まってもいないのに勝った気になっている奏ちゃん。


「桜ちゃんはどうする?」

「んー。思い出残したいですし、出てみます」

「わかったよ。それじゃあエントリーしに行こう」


 看板を見て受付の場所を確認して、受付で二人のエントリーを済ませる。

 名前を書くだけだったので、簡単な作業だった。

 二人は番号の書いてあるプレートを貰い、それぞれ胸の辺りに着ける。


「開始時刻は今から30分後ですので5分前にはここの出場者待機の場所まで集まってくださいね」


 受付のお姉さんから時間と場所の確認を終えた僕らは時間まで近くで時間を潰した。

 そして―――とうとうミスコンの時間。


「それじゃあ行ってくるわ、優勝は私でしょうけど、せいぜい楽しみなさい佐渡」


 余裕の顔で待機室へと入っていく奏ちゃん。


「それじゃあ行ってきますね佐渡さん」

「うん。頑張ってね」

「……あの佐渡さん……」

「ん? なにかな?」

「……いえ、何でもないです行ってきますね……」


 そう言って桜ちゃんも待機室へと消えて行った。

 二人の姿が完全に見えなくなったのを確認してから、僕はミスコンの観客の席へと急ぐ、出来るだけ前のいい席を取ろうと、人ごみをかき分け走る。

 何度も「すいません」、「ごめんなさい」を繰り返し、どうにか会場まで到着した。


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