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ホームレス少女  作者: Rewrite
天王寺奏編
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エピローグ

 僕が目覚めて最初に見た景色は白い天井だった。


「ここって……天国ってとこなのかな」


 体を少し動かそうとすると胸の辺りがひどく傷んだ。


「死んでも、その時の痛みって残るものなんだな」


 何となく感慨に浸っていると、不意に涙が出てきた。


「もうみんなに会えないのか。……悲しいな」


 涙が溢れて止まらない。それくらい僕にとっては大切な友達だったんだ。

 僕が一人泣いているとガチャという音が聞こえた。

 体を動かそうにも全身が痛くてあまり動かせない。僕は首だけを動かし、音の方向を見た。

 そこには


「お……起きたのか誠也っ」

「……よかった。あんまり心配させないでよね」

「主君、よく御無事で……」


 僕の大切な友達がいた。

 僕は生きていた。

 こんなにうれしいことはない。


 それからしばらくあの後のことを間宮さんたちから聞いた。なんと、驚くことに僕はあれから三日間も眠ったままだったらしい。その間毎日学校終わりにみんなでお見舞いにしてくれていたみたいだ。

 奏ちゃんたちの方はあれから親子二人で話し合って、どうやら上手く和解できたようだ。

 それから面会時間終了まで間宮さんたちと楽しい談笑を続けた。


「じゃあまた明日くるわね」

「またな誠也っ」

「では、主君」

「うん。お見舞いありがと。じゃあね」


 みんなが一人ずつドアから出ていく。みんながいなくなった病室は少しさみしかった。

 それから医師から今の僕の状況を説明された。僕の刺された箇所は運よくなのか、源蔵さんが最初から僕を殺すつもりまではなかったのか、急所は外れており、傷も残らないということだった。それでもすぐに退院というわけにはいかないようで、一週間の入院ということだった。

 この後も今日は後は寝るだけということはなく、お母さんからの電話で今回の話を問い詰められるという仕事が残っていた。妹の優香ゆうかも泣いて心配しているようで、宥めるのに時間がかかった。ここまで来てようやく僕は眠ることができた。


 これですべての仕事が終わり、これにて一件落着。と言いたいところだが、僕には一つ気がかりがあった。

 それは奏ちゃんのことだ。

 あれからもう三日が経ったけど、奏ちゃんからの連絡はない。間宮さんたちに奏ちゃんのことを聞いてもみんな何も知らないようで、首を傾げるだけだった。別にお見舞いを期待していたというわけではないが、やっぱり奏ちゃんが笑顔になれたのかこの目で確かめたかった。


「……奏ちゃん」


 平日の昼下がり、天気は快晴。僕は何もせずただただ窓から外を眺めていた。といっても心の中では奏ちゃんが来ないか、来てくれないか、という気持ちでいっぱいだったりする。

 そんなことを考えていると病室のドアが開いた。

 僕はこの時間だとナースさんの検診の時間だろうと窓から目を離し、そちらへ目を向けた。


「検診ですよ……ね……」


 しかしそこに居たのはナースさんではなく、お父さんと笑顔で手を繋いでいる


 奏ちゃんだった。


「佐渡」

「なにかな?」

「心配させるんじゃないわよ。バカっ」

「ごめん」

「ホント……心配だったんだからーーーーー」


 笑顔だった奏ちゃんは顔を涙で濡らしながらお父さんとつないでいた手を離して僕の元まで駆け寄ってきた。


「青年。いや、佐渡君。この度は本当にすまなかった」


 お父さんもお父さんで僕に頭を下げてきた。


「いいんです。これは僕がやりたくてやったことです。奏さんを笑顔にしたくてやったことです。奏さんが笑顔になれたんなら、お父さんも笑顔になれたんなら、それでいいです」


「すまない。それと話は変わるんだが、佐渡君。卒業したら家で働かないか?」

「え?」

「いやな、奏がそういうんだよ。だから君には必ず家で働いてもらう」


 僕は胸で泣いている奏ちゃんを見る。

 すると奏ちゃんはニッコリ笑って


「絶対だからねっ!! 佐渡っ!!」


 こういった。

 僕はなにか言おうと必死に頭をフル回転させていると源蔵さんが時計を見て慌てだした。


「おっと。奏、遊ぶ時間だ。行くぞ」

「うんっ。じゃあね佐渡」

「あ、ああ、うん」


 なにわともあれ、今回も無事に本当の笑顔を見ることができた。

 今はそれを喜んでおこう。




「ホームレス少女」天王寺奏編  完

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