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参ったわね、死神に魅入られてしまったわ。
困ったわね、死神は嫌いなんだけど、美しく変身したのよ。
美しい青年なわけ、永遠に美しい青年なのね。
「ヘレナ~、お似合い~」
「美しい人同士~」
「ヘレナ、幸せ~」
サボテン達が、はやし立てる。
「ヘレナさん、いえ、時枝さん、とっても素敵です」と山下朱音が言った。
ムカッとする代わりに、頬が熱くなった。
私らしくもない……
「朱音さん、ありがとうございます」と死神が微笑む。
あの元死神の寒さや、まがまがしさは消えて、さわやかな好青年になっている。
「陽斗さん? はるとさんと呼べばいいんですか?」と朱音。
何で、あんたが、死神の名前を知っている訳?
うわ、もうちょっとで、私の死神の、と思いそうになる……
「いやあ」と元死神が照れる。
陽斗という名前に相応しい、美しい笑み……
「ヘリオス様が名づけてくださいました。あの、そのう、ヘレナ様も、気に入ってくださったみたいで、私も嬉しいです」と元死神。
「誰が気に入ったって? 誰が」と毒づきながら、私の顔がふやけたように微笑む。
微笑むつもりなんかないのに、勝手ににやけてしまう……
どうなっちゃったの、私……死神なんかに。
「寒くて冷たい場所にいながら、長い年月をかけて温めた、私のたった一つの喜びでした」
と陽斗が言う。まんま、告白モードじゃない……
「嫌われていてもいい。愛されようなんて思っていません。自分の心の中にある輝く想い。これだけが、私の宝物でした」
山下村という常夏みたいな場所では、場違いだけど、私は、瞬間的に、長い年月に渡る死神の孤独を思った。
それは、奇妙に、私の長い年月に渡る孤独と似ていた。
なぜか、私の傍らに昔の仕事で使っていた銀の馬車があった。
ヘリオスめ。
「乗りなさい、私の馬車に、私の隣に」と私は言った。
死神は、おずおずと私の馬車に乗り、小さくなって、私の隣にちょこんと座った。
ふっふっふ、と私は笑った。
何て私の馬車に相応しい男だろう。
私を脅かすことなく、私の隣に座れるなんて。
私の隣に座っているのが、やたら似合うなんて。
私は、天高く馬車を走らせた。
自分の馬車に乗る男を夢見てきた。
私の馬車に相応しいのは、ヘリオスしかいないと思い詰めてきた。
ヘリオスが乗れば、それはヘリオスの馬車になる。
太陽の馬車になり、戦車になる。
私は、単なる太陽の添え物となる。
今は違う。
私は、自分の馬車で、月の女神となる。
そして、愛する男を隣に乗せている。
私は、私のままで、愛する男をゲットした。
ラッキーな女だ。
「私は、何てラッキーなんでしょう。女神さまの馬車に乗れるなんて」と死神が言った。
「バカね。ラッキーなのは、私の方よ」と私は言った。
「ありがとう。私を愛し続けてくれて」




