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ヘリオスの末裔 ヘレナ  作者: まきの・えり


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6


 参ったわね、死神に魅入られてしまったわ。

 困ったわね、死神は嫌いなんだけど、美しく変身したのよ。

 美しい青年なわけ、永遠に美しい青年なのね。


「ヘレナ~、お似合い~」

「美しい人同士~」

「ヘレナ、幸せ~」

 サボテン達が、はやし立てる。


「ヘレナさん、いえ、時枝さん、とっても素敵です」と山下朱音が言った。

 ムカッとする代わりに、頬が熱くなった。

私らしくもない……


「朱音さん、ありがとうございます」と死神が微笑む。

 あの元死神の寒さや、まがまがしさは消えて、さわやかな好青年になっている。

「陽斗さん? はるとさんと呼べばいいんですか?」と朱音。

 何で、あんたが、死神の名前を知っている訳?

 うわ、もうちょっとで、私の死神の、と思いそうになる……


「いやあ」と元死神が照れる。

 陽斗という名前に相応しい、美しい笑み……

「ヘリオス様が名づけてくださいました。あの、そのう、ヘレナ様も、気に入ってくださったみたいで、私も嬉しいです」と元死神。


「誰が気に入ったって? 誰が」と毒づきながら、私の顔がふやけたように微笑む。

 微笑むつもりなんかないのに、勝手ににやけてしまう……

 どうなっちゃったの、私……死神なんかに。


「寒くて冷たい場所にいながら、長い年月をかけて温めた、私のたった一つの喜びでした」

 と陽斗が言う。まんま、告白モードじゃない……

「嫌われていてもいい。愛されようなんて思っていません。自分の心の中にある輝く想い。これだけが、私の宝物でした」


 山下村という常夏みたいな場所では、場違いだけど、私は、瞬間的に、長い年月に渡る死神の孤独を思った。

 それは、奇妙に、私の長い年月に渡る孤独と似ていた。


 なぜか、私の傍らに昔の仕事で使っていた銀の馬車があった。

 ヘリオスめ。


「乗りなさい、私の馬車に、私の隣に」と私は言った。

 死神は、おずおずと私の馬車に乗り、小さくなって、私の隣にちょこんと座った。

 ふっふっふ、と私は笑った。


 何て私の馬車に相応しい男だろう。

 私を脅かすことなく、私の隣に座れるなんて。

 私の隣に座っているのが、やたら似合うなんて。


 私は、天高く馬車を走らせた。

 自分の馬車に乗る男を夢見てきた。

 私の馬車に相応しいのは、ヘリオスしかいないと思い詰めてきた。


 ヘリオスが乗れば、それはヘリオスの馬車になる。

 太陽の馬車になり、戦車になる。

 私は、単なる太陽の添え物となる。


 今は違う。

 私は、自分の馬車で、月の女神となる。

 そして、愛する男を隣に乗せている。


 私は、私のままで、愛する男をゲットした。

 ラッキーな女だ。


「私は、何てラッキーなんでしょう。女神さまの馬車に乗れるなんて」と死神が言った。


「バカね。ラッキーなのは、私の方よ」と私は言った。


「ありがとう。私を愛し続けてくれて」







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