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ヘリオスの末裔 ヘレナ  作者: まきの・えり


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 ヘリオスの妹って、セレーネじゃないの? ですって?

 何を言っているの。ヘレナに決まってるじゃないの、私が言うんだから。

 知ってる? ヘリオスって、黄金に輝く戦車に乗って、天空を飛び回っていたのよ。

 並みの男ならシチュエーションに負けるわよね。

 黄金よりも戦車よりも輝いていたのが、ヘリオスなのよ。

 我が兄ながら、惚れ惚れしたわ、何て美しい男。

 別に兄弟で恋愛したって、構わないのよ、神様なんだから。

 それなのに、ああ、それなのに、言うにこと欠いて、レウコトエー……


 私が愛するぐらいの男だから、ヘリオスには、人間、神様を問わず、大勢の愛人がいたのよ。

 それなのに、ああ、それなのに、地味な人間の女なんかに……

 レウコトエーって、いわゆる深窓の令嬢ってやつね。王女様だったのよ。


 相手が熱がるぐらいの愛情を捧げても、レウコトエーは、ヘリオスを拝むだけだった。

 太陽神としてのヘリオスに対する愛は深かったけど、ヘリオスが欲しかったのは、そんなもんじゃなかったのね。

 恋人になりたかったのよ、ハッキリ言えば、肉体を征服したかったの。


 今のあんた達と同じで、私達神も変身できるのよ。


 物乞いの姿になって、お城まで行く。門前で施しされて、追い返される。

 立派な貴族の姿になって、城内に通されるけど、レウコトエーには会えない。

 隣国の王子様になって、レウコトエーに求婚するが、断られる……


 最後に思いついたのが、レウコトエーの母親の女王様に化ける……

 我が兄ながら、可哀そうになるぐらい必死だったのね。

 大体、神様の求愛を断る女なんていないのよ、断ったりしたら、バチ当てるし。


 ここから先は、神様ヴェールに包まれて、私にだってわからない世界だわ。


「レウコトエー。お母さまですよ」

「まあ、お母さま、どうなさったんですの、こんな時間に」

「レウコトエー、お前を愛している」

「私だって、お母さまを愛していますわ」

「ふっふっふ。実は、私は、太陽神へリオスなのだ」

「キャ~~」

「レウコトエー、お前を愛している」

「アレ~~~」


 というような展開があったのかどうか、私にはわからない。

 が、レウコトエーへの嫉妬のあまり、告げ口したヤツがいたのよね、いるわよね、どこの世界にも。

 ま、私だって、嫉妬はしたけど、告げ口なんて卑劣な真似はしないわ。(?)


 レウコトエーの寝所に男が入ったということで、(やったかどうかは関係ないみたいね)父親は激怒。

 王様だったから、体面やプライドなんてもんも大事だったんじゃない?


 レウコトエーは、衆人環視の元、生き埋めにされることになったのよ。

 火あぶりとか、はりつけよりはマシだけど、一番苦しいかもしれないわね、人間にとっては。

 私は、ちょっと複雑な気分だったわね。

 恋敵が減って、嬉しい?

 ヘリオスの心を奪った憎い女?

 生き埋め、万歳?


 な~んか、可哀そうになっちゃったのよ。

 悪いのは、勝手に好きになったヘリオスでしょ?

 レウコトエーは、誘惑もしなかったし、ヘリオスを好きになったわけでもない。

 勝手に母親に化けられて、寝所に入り込まれただけでしょ?


 人間の大好きなスーパーヒーローかなんかが現れて、レウコトエーを助けたりしないのかしら?


 レウコトエーがおとなしく、掘られた穴に入れられたとたん、天地が真っ暗になったのよ。

 

 私だって驚いたわよ。

 何が起こったのかわからない。

 その時は、まさかヘリオスが、仕事を放り出して、天から落っこちたなんて、想像もしてないじゃない。


 ただただ呆気に取られて、人間たちが騒いだり泣いたり叫んだり走り回るのを見ていただけよ。

 そこからの数日間、天地は、私が夜のお仕事を始めるまで、真っ暗なままだった。

 私だけは知っていた。


 レウコトエーの姿が、穴の中にはなく、一輪の花だけが咲いていたことを。


 しまった、と思ったのは、その時よ。

 もう、妹には知らせておいてよね、ヘリオス。

 

 かなりの時間差で、仕事を放り出して落ちたもんだから、全然違う場所に落ちてしまったってわけ。

 どこだったかなんて、今では思い出せないわ。

「あんた誰?」「あんた誰?」「あんた誰?」というサボテン達の不審物発見の声を聞いていただけ。


「月の女神ヘレナよ」と言ってみても、虚しい限りだったわ。

「それ何?」「それ何?」「それ何?」「それ何?」……


 仕方なく、サボテンの姿になった訳。

「さあ、これで、サボテン仲間よ」

「サボテン仲間よ?」

「サボテン仲間よ?」

「サボテン仲間よ?」




 

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