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ep.2 元魔王、休日を満喫す。


――ポッポー、ポッポー


「うぅ、うるさぃ……んあ、朝……お? おお?!」


元の世界には戻ってなかったか……

でも、なんか……なんか、ムズムズするぅー!


「魔王ビーム」


ドゴーン!凄まじい音を立てて、壁にどデカい風穴が空いた。


「やったぁ……魔力が戻って」


「ない」


3%しかない。ボクの魔力の上限値が。

いや、3%でも中級魔族程度にはあるけどさ……

そんなことよりも真の問題は、このこれっぽっちの魔力で壁を直さなくっちゃならないことかなぁ。


破壊はボクにとって朝ごはん前だけど、直すのには何倍もの魔力が必要になるんだよねぇ。

まあ、やるしかないけど……


「はぁ、直すついでに朝ごはんでも作ろ」


壁をテレキネシスの応用で直しながら、終末を呼ぶ闇の王の劫火の超手加減版でお湯を沸かした。

マグカップとカップ麺にお湯を注いだら、卵を焼き、パンを焼く。野菜は食べない。


まずはパンに卵を乗せて、塩こしょう。

口に運ぶまで、全てテレキネシスの全自動〜。


「んぐんぐ、ほいひい」


塩辛い口に、あまあまぬるめコーヒーをIN!


「んぐっ、しあわせ〜♡」


さて、こいつはどうだ。

このカップ麺とやら。客の真似で作ったが、我をガッカリさせるなよ……?


「ふち……ぬち……ずず。あちっ」


食べにくい。

だが、味は『悪くない』。

まあ、70点といったところか。


全てを喰らい尽くした我を待つのは、デザート。

冷蔵庫にはケーキが入っている。


ーーはずだった。


手紙に置きかわっている……だと……?


「マオ様。野菜を食べられない魔王に、ケーキを食す資格はありません。よって、ケーキは没収させていただきます」


「そ、そんなぁ……ボクのケーキがぁ……」


ボクの魔王生において、膝から崩れ落ちるのはこれが初めてだった。

……まあでも、ケーキが無いなら、食べに行けばいいじゃない!

ってなわけで指パッチン!


「まおーチェンジ!」


――ボクの全身を、光が包み込む。

光が1つずつ弾けるのと同時に、かわいい衣装が姿を現す。


「うん、パーペキだね」


魔力、ほぼないなっちゃった。

ま、いっか。ケーキ食べるだけだし。


――しばらく歩いてると、目的のおしゃれなカフェが目に入る。


ボクのケーキ、ボクのケーキぃ!うわぁ……いろんなケーキがあるよぉ、どれもおいしそー。

よ、よだれがでちゃう。


「だ、誰か、捕まえてえー! 息子の……」


ちょっと、いきなり叫ばないでよぉ……

振り返ると、女の人が泣き叫んでて、変な乗り物に2人乗りしてるやつが似合わないバッグを持っている光景が目に映った。


ほう、成程。我の前で狼藉を働くか。

ではその代償、身をもって教えてやるとしよう……!


「身の程を知るがよい。終焉(ジ・エンド)!」


手を振りかぶった直後、空気が歪み、横向きの竜巻が発生する。

それを中心に凄まじい風圧が発生し、ひったくり犯は進んでいる方向とは反対、ちょうど被害者の方へ瞬きする間に吹き飛んでいった。

これに懲りたら、罪を償い真っ当に生きよ。愚か者が。


「え、何今の、ヤバくない……?」

「トゥイッターに上げちゃおw」


他にも、無言でスマホを構える人々が次々と現れる。

少し煩わしいが、これで気持ちよくケーキが、食べられ……あれ?


か、体が……魔力が……くそ、

意識、が……


――「ん、ん……ここは……魔王城?」

目が覚めると、ボクは魔王城にいた。


「ええ、マオ様。今回は特別にあなたをワープさせました」


「特別ってことは、またあっちの世界に戻されるんだよね。でも、ダリア。なんでわざわざ魔王城に?」


「それは……マオ様とお話をするためです」


「……ケーキのときみたいに、手紙じゃダメなの?」


ダリアが、ほほ笑んだ。

……ちょっとバカにしてるかも。


「はい。直接お話したいことが2つあったので。」


「まず1つ目、人前ではむやみに魔法を使わないこと」


「えー、人助けしたのに! ぶーぶーぅ」


両手でそれぞれバッドサインを作って抗議する。


「あまり品の無いことをすると、魔力をまた全て没収しますよ?」


「ダリア、こ、こわいよぉ……ごめんなさい」


「こほん。2つ目ですが、誰かを守るためにその力を行使するのであれば、その限りではありません。マオ様、立派でしたよ」


えへへ、久しぶりにダリアが頭なでなでしてくれた。

……そこに、こう付け加えてきた。


「とはいえ、野菜を食べないのを見過ごすわけにはいきませんけどね」


うぐぅ……


「でも、マオ様はよく頑張りました。なので、ケーキを作りました。ベジ・ケーキですが」


ダリアの指パッチンで、おっきくて美味しそうなケーキが出てきたあ!


「ううん。ダリアの作る料理は、昔からなんでも、すーっごく美味しかったんだから! このボクが認めるんだから、もっと胸を張るべきだよ!」


「おいしい、おいひぃ、ほひひぃ!」


「マオ様、お褒めの言葉は嬉しいのですが……魔王たるもの、もっと上品に食べてください」


全く……そう言いながら呆れ顔をしていたダリアだけど、その顔はすっごく嬉しそうだった!

ボクって、幸せ者だね。


――「クロユリ、まさか貴方がこっちにワープさせる案を出すなんてね。マオ様に甘いのはどっちかしら?」


「フン。あんな騒ぎを起こした張本人がその場でぶっ倒れるとは、迷惑もいいところだ。これが最善だと判断したに過ぎない」


「ふふ、それもそうですね〜。ところで、さっきマオ様を見に来たホオズキさんがぶっ飛んでいったのですが、もしかして……マオ様を起こさないためですか?」


「そ、それはだな……ソイツがまた酒を飲みながら魔王城を彷徨いたからだ。たまには、規律を重んじさせるのも私の役目だ」


「あら、暴力はいけませんよ」


「わざとらしく手を合わせるな。……フン、私はもう行く。マオ様を向こうの世界に戻すのは任せたぞ」


闇に溶けていくクロユリを見送りながら、ダリアが微笑んだ。


「ええ、ちゃあんとやっておきますよ」

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次回 第3話 元魔王と遅刻 明日更新(予定)

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