第18話 ムサシ
「やぁ、久しぶりだね。元気だったかいクルト?」
「え?どちら様ですか?」
場所は『結界』の外…ユカルドが「BHF」総本部を出て襲撃者に直接会いにきているところである
ユカルドからしたら旧知の仲だがユカルドの体は変わり見た目が大きく変わっているために襲撃者からしたら知らない人にいきなり話しかけられたに等しい状況である
「あぁ…そういえば今は体を変えているんだったね…」
「だからあなたは先程から何を……今体を変えてるって、そうおっしゃいました?」
「ふむ…失言だったね…では自己紹介するとしようか、私はここユーステリア学園の学園長ユーフェイというものだ」
「あら学園長殿直々のお出迎え感謝致します。自分はベートリアという者です、以後お見知り置きを…」
「とりあえず形式上ようこそ我が学園へ、とでも言っておこうかね。付け加えて我が学園へどのような御用件で?とも言っておこう」
「これはこれはご丁寧に…重ねて感謝致します。早速ですが自分の用件を言わしていただきます。といいましても自分の用件は学園長殿、あなたにあるのですよ」
「私に用件か…では場所を移すとしようか。こちらへどうぞ、お茶やお菓子はすぐに用意するからそれまで待っていてくれ」
そう言いながらユカルドは空間に狭間を創り入り口たる穴を開け中へ促した。それに対してベートリアは「ほぅ…これはお見事です…」などと感想を述べながら中へ躊躇なく入って行った
「どういうことだ…?」
「BHF」総本部…主モニターで様子を見ていたエリウィンは目の前で起こったことが信じられず呟いていた
彼らの前にいきなり黒い穴が開いたかと思ったら2人揃って中に入りそれ以降捕捉できなくなってしまっている
「副長…どう致しましょう…?」
「し、仕方ない…いつも通りバステルの動向調査を続行しよう」
スキル「生成」を持つクルージオの問いかけにエリウィン自身も釈然としないながらも他にどうすることもできないのでとりあえず指示を出すしかなかった…
「わざわざ場所を変えてもらってすまないね」
「いえいえ、あそこではどうやら監視されていたようですし学園長殿にも他の人に隠しておきたいこともあるでしょうしね」
「察しが良くて助かるよ。では用件を聞こうか」
ベートリアと名乗った襲撃者に話を促しながら丸テーブルと椅子、湯気の出ている紅茶に皿に乗ったクッキーまでも出てきてそこに2人とも腰をおろした
「ではお伺いしますが…この学園に『ユーステリア』などと名付けたのは誰なのです?ついでにご存知でしたら理由の方もお願いします」
「そう名付けたのは私だ。それと理由だったかな?それは私が設立させたからだ」
「あなたが…!それにあなたが設立させたからと言って『ユーステリア』と名付ける理由がよく分かりません」
「ここまで話しても分からないのかい、クルト?」
「そう!そうです!なぜあなたは自分の本当の名前をご存知なのですか!?自分は今ベートリアと名乗っています!なのになぜ…!」
「落ち着きたまえよ、クルト。ふむ…やはり自己紹介が必要か…」
「自己紹介ならもう済ませたでしょう!話を逸らさないでください!」
「逸らしたつもりはないのだがね…改めて名乗らせてもらおう、私の本当の名前はユカルド・ユーステリアだ。これで学園に『ユーステリア』と名付けた理由は納得していただけたかな?」
「ユカ…ルド…?ユカルド!?あなたなのですか!?」
「だからそういっているだろう?肝心なところで察しが悪いのは相変わらずだな、クルト」
親愛を込めた目でクルトの名前を見ながら呼びかけるとクルトは涙を浮かべながらも泣くのを堪えてユカルドに抱きついて来た
「ユカルドせんぱぁい!自分をおいてどこ行ってたんですかぁ!ずっと一緒いるって…そう言ってたのに…」
「すまなかったね…でもここにはギシュルもいるし君は私にまた会いに来てくれた。それで良しとしてくれはくれないだろうか?」
「ギシュル師匠も…?」
「あぁ、それに加え予言の子らしき子もいるしな」
「予言の子、ですか…」
そう呟いたとき、クルトの表情が明らかに曇ったのだが久々に会えた可愛い後輩との再会が自分の思っていた以上に嬉しかったらしく見逃してしまった
「仲間…だった?」
ギシュルの妙な言い方にシャドウは疑問を覚えざるを得なかった
「より厳密に言えば昔同じ派閥の仲間だったけどそれはもう解散しているのよ」
「あぁ…なるほど…その派閥というのが気になるところではありますがその前にこの騒がしいのどうにかできません?ちょっとさっきからいつも以上にうるさいもので…」
「ちょっと待って」
そういうとギシュルは短く詠唱して子供くらいの大きさの土人形を創り出した
「ムサシ?聞こえる?少しの間だけ“転生先の設定”をこの「ゴーレム」に変更してくれるかしら?」
「お?騒がしいのが消えましたね」
シャドウがそういった途端先程ギシュルが創り出した土人形の目が光ったと同時に動きだした
「感謝するのですよぉ!ギシュルゥゥゥ!!」
小さいゴーレムが全身で喜びを表現するかのように両手をいっぱいに広げていた
「彼の中ってすごく暗いんですよぉぉぉ?しかも彼に呼びかけても黙れって言われてすごい圧力を感じるしぃぃ…押し潰されるかと思ったんですよぉぉぉ!?」
「うわぁ…」
シャドウは自分の中にこんなのが入っていたのかと少し寒気がしたが…ムサシはそんなの御構いなしにしゃべり続けた
「うわぁってなんですぅ!?うわぁってぇぇ!?ひどいじゃないですかぁぁぁ!10年前後の付き合いじゃないですかぁぁぁ!泣きますよぉぉぉ!?拙者、泣きますよぉぉぉぉぉ!?」
「……ボリダー先生」
「何も言わないで頂戴…今すごく後悔してるから…」
「後悔だなんてつれないじゃないですかぁぁぁ!同じ派閥で一緒に戦った仲じゃないでs……」
あまりにもやかましかったからなのかギシュルはスキル?魔法?を解除してゴーレムを消してしまった
「予言の話だったわね。いいわ、してあげる」
「あ、あの…さっきのは…」
「見なかったことにして頂戴。まぁでもあとでユカちゃんには報告しなきゃよね…」
「報告するのも予言の話をするのもいいんですが…とりあえずムサシでしたっけ?こいつ黙らせてくれません?なんか旧友に会えたからっていつも以上に騒がしいんですが…」
「じゃあ心の中に檻をイメージみて?」
「は、はぁ…」
「出来たわね?ならそのムサシを檻の中に放り込むイメージをして見なさい。そうすれば静かになるはずよ」
「あ…ホントだ…ちなみにさっきのはどういうことなんですか?」
「簡単なことよ?自分の体の中なんだから好きなようにできる、そういうことよ」
「えっと…それはつまり僕の中でムサシを檻の中に閉じ込めたと…?」
「ええ!その通りよ!」
すごくキレイな笑顔デシタ。キレイ過ぎて吐き気がしたよ…
ゴリマッチョの威圧オカマお化けのキレイな笑顔なんて…おえぇ…




