第12話 核反映
『だってあたいはクリフェンの守護神なんだから♪』
「え…守護神って…え、どういう…?」
『最近やっとクリフェンがスキル「守護神現化」の発現条件を満たしてくれたから今こうやって話せるようになったんだよー?』
「発現条件っていうのは?」
『あたいの二つ名は孤独って言ったよね?』
「あぁ言ってたね孤独のファニファって。でもそのこととなんの関係が?」
『簡単なことだよ!クリフェンが強い孤独を感じればいい』
「俺が孤独を?」
『もともと全員守護神がいるんだけど魔力を持つ人はその守護神を現化できるんだよ』
「それは誰でもできるのか?」
『ま、やろうと思えばねー。でも守護神にはその守護神の二つ名があってそれに沿って微妙に違ってくるけどねー』
「ファニファって現実世界にいるほかの人がどんな守護神を持ってるか分かるか?」
『ごめんねー…そーいうのは分からないんだ…』
「そっか、そうだよね…」
『誰か知りたい人でもいたの?』
「うん、ちょっと親友のが気になってね」
『ちなみにその子の名前は?』
「見てたなら分かると思うけどアクトって言うんだ」
『ふーん…あ、そういえばほかに質問とかないの?』
何か考える素振りをしてからそれを誤魔化すように話題を切り替えた。
「うーん…あ、そういえば現実世界のほうはどうなってるの?」
アクトの話をしてせいで現実世界のほうが気になり聞くことにした。
『うーんとね、クリフェンと同じくらいの男の子が倒れて50代のおじさんが心配そうに駆け寄ってるね』
「アクトとユカルドさんか…」
『ん?ユカルド?ユカルドってユカルド・ユーステリア?』
「え、知ってるの?」
『知ってるも何もあたいの話し相手になってくれてたことがあるんだよ!』
嬉しそうに笑顔を浮かべながらぴょんぴょんと跳ね回っている。
「まだ聞きたいことあるけど…今はアクトが心配だ。現実世界に返して欲しい」
『何…?君もあたいを1人にするの?』
さっきまでの嬉しそうな雰囲気はどこへやら…暗い雰囲気が漂い始める。
『ここまで楽しく話しておいてまたあたいを1人にするの?』
「い、いや1人にするとかそんなんじゃ…」
『嘘だ嘘だ嘘だ!そうやってみんなあたいを見捨てて1人にするんだ!』
ファニファは壊れたように叫び出した
「お、落ち着けって!別に見捨てることなんて…」
『うるさい!こんな世界なんてもう壊れてしまえばいいんだ!消えてしまえばいいんだ!』
「なっ…!」
ファニファが壊れてしまえばいいと言った途端に居心地の良かった木造建築の家に、というより空間そのものにヒビが入り始めた。
『ユカルドもそうだ!また会いに来てくれるって言ってからもう数百年経つ!人間なんて…人間なんて…滅びてしまえばいいのに!』
ついに空間の崩壊が始まった。
「俺は、ファニファのことを絶対に見捨てない!」
『嘘だ、信じられない』
「独りぼっちの辛さは…知ってるからさ…」
学園で上位クラスの実力を持っており前は友達もたくさんいた。だがバステルの悲劇を少しでも紛らわすために明るく振る舞ったのが仇となりみんな愛想を尽かし消えていった…「お前といるとすごく不愉快になる」と言われて…
『みんなに裏切られ見捨てられて、それ経験しておきながらどうしてあたいに信じろって言えるの!?』
「俺にはアクトがいるからだ!アクトは俺がどんなことを言ったとしても付いて来てくれた…どんなに俺が信頼を向けても裏切らず受け止めてくれた…」
『そんなの…いつかまた絶対に裏切られる!』
「それはない!」
『なんで言い切れるの!』
「それは今までの経験でわかる!嘘をつかれ続けた人は嘘をつく人に敏感になる。それと同じだ!」
『っ…!でも出会ってたかが数週間の相手に…』
「全部見てたんじゃなかったのか?」
『え…?』
反応からでは全部を見ているわけではないのか、それとも忘れているのか…はたまた “気が付けなかっただけ” なのか…
「俺らが初めて会ったのはアクトが転入してからじゃない」
『ならいつ…!』
「14年前…セレスが言ってたアクトと最後に会った年のさらに2年前だ」
2人が言い合いしている間にも空間の崩壊は進み残すのはファニファとクリフェンの足元のみとなっていた。
『14年前…まさか14年間、信じ続けたっていうの?』
「あぁ、そうだよ。向こうはいつから俺と知り合いでいつどうして別れることになったか覚えていないだろうけどな…でもあいつも俺のことを信じてくれた、俺は…それだけでもう充分なんだよ」
『クリフェンの気持ちはよく分かった…そこまで言うなら…あたいもクリフェンを信じる…』
ファニファの頰に一筋の光る線が走った。
「ファニファ…もう大丈夫だ、君はもう独りじゃない」
そっと優しく頭を撫でてみた。
驚いたようにビクッとしたあとに体を預けるように体重をかけてきた。
「そういえばさ」
『んー?』
最初に聞いたような陽気な声色に安心したように質問を続けた。
「魔法「念話」って使える?」
『お、「念話」知ってるんだ!』
「アクトがギリアスの自立稼働用人格?だったかな?と話すときに使ってたんだよ」
『ギリアスってことは神の血だから…もしかしてソフィア姉!?』
「ソフィアを知ってるのか?」
『さんを付けてね?ソフィア姉は自分が許した相手にしか呼び捨ては許さないから、それとももしかして許可された?』
「い、いえ…そもそも話したことすらないから…」
『じゃあ名前呼ぶときは気を付けてねー』
「はい…で話戻すけどさ」
『うん』
「その「念話」を俺も使えるように出来ないかな?もし使えたらいつでも話せるでしょ?」
『あ、そゆこと?それなら心配いらないよ!』
「なんで?」
『だってあたいはクリフェンの守護神だよ?スキル「守護神現化」を使えば現実世界でもいつでも会えるよ!』
「いやでも見た目がなー…怖いんだよなー…」
『派生スキルの「核反映」って言うのを習得出来ればこの姿で会えるよ!』
「そういえば派生スキルってどうやったら発現するんだ?」
『簡単だよ!スキルごとに派生スキル発現ミッションっていうのがあってそれをクリアすると発現するんだ!』
「へーそうなんだ。その「核反映」っていうのはあと何が必要なんだ?」
『守護神の核と会うことと一定以上の熟練度…つまりあたいと会って話をしてるから残るミッションは熟練度だけはずだよ!』
「よしっ!それとこのスキルにはあといくつの派生スキルがあるんだ?」
『「核反映」を除けばあと一個だね!』
「それは…?」
『ナイショー!でもこれの必要なミッションも熟練度だけだから頑張って!』
「あはは…確かにそのほうが面白いかもな…」
『で、アクトだっけ?が心配なんでしょ?行ってあげな!』
「おう、ありがと!」
言い終わると同時に視界を“失い”再び視界を“得た”ときに見たのは木で出来たドアだった。
「そういえば腹が痛くなってトイレにこもったんだったな…」
今思うと腹が痛くなったのはファニファが呼び出したからだったのかも…
「そういえばアクトがっ!」
戻ってきた理由を思い出しトイレのドアを勢いよく開け放った。
ユカルドが倒れたアクト部屋から運び出そうとしているところだった。
「お、クリフェン君じゃないか」
「ユカルドさん!アクトに何があったんですか!?」
「ちょっと昔のことを聞いていたらいきなり倒れてしまってね、これから医務室に連れて行こうかと思ったんだよ」
「なら俺が運んでもいいですか?」
「どうやって?」
「スキル「守護神現化」を使います。」
「ほう、守護神とはうまく言ったか…してその守護神の名前は?」
「孤独のファニファです」




