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81、審査の時間

 こうして俺たちは、ゴマ豆腐と揚げ出し豆腐を完成させた。

 今回は三回戦ということもあり、全員が少なめの量になっている。

 あまり沢山の量を出されると、食べきれないというのもあるようだった。


 そして今回カタスの用意した料理はサラダ様なものだった。

 とげとげの付いたパイナップルの葉っぱをとったような野菜で、“ボモロ”と呼ばれているらしい。

 皮をむいてスライスをして、二種類の調味料で炒めたり煮たりしていた。


 同じ食材を使っているといった関連性を持たせていたらしい。

 未知の野菜であるらしく、先ほどここにいる人たちにカタスは聞いて回っていたが一人も知っているものはいなかった。

 だからどんな風なものになるのだろうか?


 そう俺たちが思って様子を見に来るとそこで、審査員の一人がその謎の野菜を口にして、


「う、うまい。しかも黄色い輝きがあるからか非常に幸せな気持ちになる……」

「では私も。……触感は芋のようですね。ですが口の中でとろけるような……これは食べたことがありません」


 といったように高評価だ。

 ちなみに俺たち全員が作ったものは全部虹色の輝きを持っていた。

 だがこの意外性と短い時間に料理を作るといった利点を加えると……俺たちが勝てるかどうか。

 

 今更不安を覚えたがもうどうしようもない。

 俺は、俺たちの目的を達成するために前に進むだけだ。

 そう俺が思って様子を見続ける。


 相変わらず好意的な意見ばかりで不安になってくる。

 こちらの方が先にしてもらえばよかった、そう俺が思っていると俺たちの料理を持っていく番になる。

 とりあえずはゴマ豆腐の方を先にもっていくことに。


 全員の前いそれを置く。

 だが変わったものにはなかなか手を付けられないらしい。

 こういった形の加工食品は、この世界にはないようだったから。


 だが俺としては、自分で食べてみて美味しいものを提供しているつもりだ。

 だから受け入れてもらえたら、そう俺が思っているとそこで、クレアが一口口にして、


「あ、甘辛い味付けですね。あと清涼感のある辛さがあって……口の中でとろけます。胡麻の風味が口いっぱいに広がる……こんな楽しい食べ物は初めてです」

「確かにそうですね。スプーンですくえるくらい柔らかくて、プティングのようです。ですが口に入れるとあっさりとしていながらも深みのあるうまみが口いっぱいに広がって……これは、私も今まで食べたことがありません」


 そうクレアとサラが言ってくれる。

 それを機に、他の人達も次々と口にして同じような感想を言う。

 まさに虹の輝き、と言っているが、今までのその食事の感触に虹の輝きがどの程度影響するのだろうか? とは思いはしたが、俺は黙っている。


 この世界の人達が楽しんでくれればそれでいいし、俺たちはやはりこの世界の人間ではない、そう、異世界人なのだ。

 やはり現地の人間とは違うのかもしれない。

 でも美味しいものを美味しいと思える能力が、俺たちの世界ともこの世界とも比較的同じであったのは、やっぱりうれしいと思う。


 だって美味しいものを食べた時の感動を共有できた方が楽しいのだから。

 そう俺が思っていると、次の料理をと審査員の一人に声をかけられて、慌てて俺は運び始めたのだった。






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