64、謎の幼女
こうして俺たちが食材を集めているころ。
寿也はお湯を呼び出しカップラーメンを作っていた。
ちなみに、今回の料理対決ではカップラーメンは禁止になった。
そんな簡単にできるものは料理と言えない、と言われてしまったのだ。
だがカップラーメンマニアの寿也にとっては屈辱だった。
「カップラーメンにだっていろいろな工夫や美味しさがあるというのに!」
そう呟きながら一つ作って、やけ食いをしようとしていたところ一緒にいたクレアが、
「あの~、寿也さん、私にも一ついただけませんか」
「! ぜひ!」
「そういえばこういったカップラーメンにはどのような種類があるのですか?」
「それは……味付け以外、で?」
「はい、異世界のものなので、私、興味があります」
そういわれた寿也は考えてみる。
カップラーメン以外のこういうものと言うと、
「カップ式のうどんやそば、焼きそばなどになるのか? 後はワンタンスープなどもあるか……春雨スープや、おこげスープもあるか」
「? どういったものなのですか?」
「うどんは小麦粉を練って細くしてゆでたもの、そばはそば粉という粉をこねて細くしたもの、焼きそばはこのラーメンの麺にソースを絡めたものか? そもそもこの世界に、“そば”はあるのか?」
食材に関して言うと、異世界なので寿也たちの世界にある者がこの世界にあるとは限らない。
似たものはあるようだが……そう思ってみているとそこでクレアが、
「“そば”はこの世界にありますよ」
「そうなのですか?」
「はい、粉にして薄く焼いたりいろいろします。一応、翻訳? されてこちらにも伝わっているのでたぶんこの世界にもある物で似たものなのでしょう」
「なるほど」
どうやらこの世界にはそばはあるらしい。
となると食べ方の違いも実感してもらえるかもしれないと寿也は考えてから、
「では、そばのカップ麺はいかがでしょうか」
「ぜひ」
「油揚げと、かき揚げ、どちらがいいですか?」
「あぶらあげ? かきあげ?」
「油揚げは、大豆で作った豆乳を固めて油で揚げたもので、このカップラーメンはだしで煮込んだものと同じような味が楽しめます。かき揚げは、野菜と小麦粉、塩、水、卵で溶いて油で揚げたものです。こちらはサクサクして美味しいですよ」
「どちらも美味しそうですね……う~ん、では油揚げの入っているそばでお願いします」
そういわれた寿也はキツネソバのカップラーメンを呼び出してお湯を入れる。
後は自分のカップラーメンにもお湯を入れて待つだけだった……のだが。
がさがさがさ
茂みが揺れる。
何かいるのだろうか?
寿也とクレアが警戒をしているとそこで、一人の幼女が姿を現した。
髪の長い美少女だが、彼女はじっと寿也の方を見てから次に、カップラーメンの方に目を移す。
しかもじ~っと見たままだ。
一言も話さない。
寿也は困りつつも、カップラーメンを見ていることに気づいた寿也はその少女に、
「えっとカップラーメンはいかがでしょうか? 食べますか?」
「……」
そこで少女は無言で頷き、近づいてきたのだった。
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