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素顔の私に似合う服

翌日、約束どおりリネットの店へ向かう。


今日は《蒼月》を着ている。

濃紺を基調に、銀の飾りが入った落ち着いたゴスロリだ。

この色合いは、結構好きかもしれない。


店に着き、扉を開けると、リネットが奥から顔を出す。少し眠そうだ。


「おはよう、リネット」

「ミオさん、おはようござ……」

リネットの視線が私の服で止まった。


「その服、今日は青なんですね!銀の飾りも昨日と全然違います!」


さっきまで眠そうだったのが嘘みたいな勢いで近づいてくる。


……これは、徹夜のテンションね。


「ちょっと、リネット。服は?」

「あっ!すみません」


リネットは慌てて店の奥を振り返った。

私もそちらへ目を向ける。


あのとき、片袖が付いていなかった紺色のワンピースが、店の奥に掛けられている。

白い襟に、細く絞られた腰。スカートには銀糸の小さな花が並び、光を受けてかすかに輝いていた。


「……綺麗ね」


「銀糸草のおかげです。ミオさんに最初に見ていただきたくて」

「この服、私が買ってもいい?」


「もちろんです!」

リネットは服をハンガーから外し、私の前に広げる。


「早速、着てみませんか?」

「ええ。着てみたいわ」


そう答えてから、私は今着ているゴスロリを見下ろした。


……脱いだら、顔が戻るのよね。

素顔を隠すつもりはなかったけど、今までの私とはだいぶ顔が違う。


……リネット、ガッカリしないかな?


「ミオさん?」


小さく息を吐く。

「驚かせちゃうかもしれないけど、今から本当の姿を見せるわね」


服に手を添え、静かに唱える。

「《月影の転装》」


リネットの作った服を身に纏う。

同時に、顔も元に戻った。


「えっ……ミオさん、顔が……?」

「これが私の素顔なの。ゴスロリ服は私専用の装備で、最初に顔も変わるように設定したの。一度決めたら、もう変えられないみたい」


「ゴスロリ……?」

「さっきまで着ていた服、ああいうのをそう呼ぶの」


「顔まで変えられるんですか……?」

「ええ。私も最初は驚いたわ」


リネットは少し考えるように黙った。


「でも……どうして、そうしたんですか?」

「素顔でゴスロリ服を着るのが怖かったの。私の顔じゃ、こんな可愛い服は似合わないと思って……」


「そんなことありません!」


力強い声に、思わずリネットを見る。


「ミオさんの素顔、とても素敵です。その服もよく似合っています!」


「ありがとう」

……素顔をこんなふうに褒められたのは初めてね。


「今までの顔のほうが、ゴスロリには似合うと思っていたんですね?」


「ええ。装備している間は素顔には戻れないし、素顔のまま着る勇気もなかったから…」


「それなら、今のミオさんに一番似合うゴスロリ服を、私に作らせてください!」


リネットはまっすぐ私を見ていた。


「時間はかかるかもしれません。でも、何年かかっても必ず……ミオさんが素顔で着られるゴスロリ服を作ります。」


その言葉が、素直に嬉しかった。


「ありがとう、リネット。待ってるわ」

「はい!約束します」


私たちは手を取り合った。



「ところで…」

「はい?」


「あまり時間をかけると、年齢的に着るのがきつくなるから、なるべく早くお願いね」


「えっ?あっ!はい…そうですね。急いで作らなきゃ」



………そこは否定してほしかったな。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

書きたかったところの一つまで辿り着けました。


これからも、のんびりお付き合いいただけたら嬉しいです。

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