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人前では使えない技

三体のオークが、低い唸り声を上げながら立ち上がった。

さっき殴り飛ばしたせいか、今度は揃って私を狙ってきた。


棍棒を振り回しながら迫ってくるオークをかわし、近いやつから殴る。

効いてはいるみたいだけど、なかなか倒れない。


そのとき、横から別のオークが棍棒を振り下ろしてきた。

避け切れず、咄嗟に腕で受け止める。


ギイイン!

……金属がぶつかったような音が鳴り響いた。


あれ?というオークの顔。

私もあれ?だが、とりあえず殴っとく。


この服は防御力も高いわね……

とはいえ、このままじゃ埒があかない。


私一人ならなんとかなるけど、リネットの身に何かあってはいけない。

できれば使いたくなかったけど、あれしかないか…


私は静かに覚悟を決めた。


まずは、雑に殴って三体をダウンさせる。

よし、準備はできた。


「リネット!今から大技を出すから、伏せて目を閉じていて」

「わかりました」


リネットは伏せて目を閉じる。


「……危険な技だから、決して目を開けちゃダメよ」

「…はい」


立ち上がったオークの一体へ、一気に距離を詰める。


「はっ!」

勢いのまま、ハイキックを叩き込む。

凄まじい音とともに、オークの巨体が吹き飛んだ。


やっぱり蹴りは威力がある。想像以上ね…


同時に、スカートが盛大に捲り上がり、中が見えるが、気にしない。

どうせ、見ているのはこれから倒すオークだけだ……


二体目へ体をひねり、勢いのまま回し蹴りを叩き込む。

オークは横向きに大きく吹き飛んだ。


三体目は、他の二体より肌の色が黒く、ひときわ太い腕をしていた。

手にした棍棒も、煤けたように黒い。


まずはローキックを叩き込み、体勢を崩す。

黒いオークの巨体がぐらりと傾いた。


そこへ一歩踏み込み、必殺の踵落とし。

振り上げた踵を頭上から一気に落とす。


ゴッ!!


鈍い音が響き、オークはその場に崩れ落ちた。


…ふぅ、これは人前では使えないわね。

威力より、そっちの方が問題だわ。


「リネット。終わったわよ」


伏せていたリネットが立ち上がる。


「凄い……オークが全滅。どんな技を使ったんですか?」

「…秘密よ」


リネットは倒れたオークを見て、もう一度私の顔を見た。


「本当に、怪我はありませんか?」

「ええ。リネットも大丈夫?」

「はい。ミオさんが守ってくれましたから」


それを聞いて、ようやく肩の力が抜けた。


オークたちの体は黒い粉になって消えた。そのうち一体だけが、魔晶核を残した。


「あっ、今度は出たのね」

「オークの魔晶核は、角ウサギのものよりずっと価値がありますよ」


……三体倒して一個か。


魔晶核を拾い、アイテムボックスへ入れる。地面には、オークたちが使っていた棍棒が残っている。


その中に一本だけ、他より黒っぽいものがあった。


……これ、ちょっと格好いい。

ついでに黒い棍棒も、アイテムボックスへしまった。


そのあと銀糸草のところへ戻り、残りを採っていく。必要な分が籠に入ったところで、私たちは森を出た。


街へ戻ると、ギルドで護衛依頼の完了を報告し、森の浅い場所にオークが三体いたことも伝える。


「浅い場所にオークが三体も……?」

「ええ。少し気になったから、一応伝えておくわ」

「こちらでも確認します。ご報告ありがとうございます」


受付のお姉さんは驚いた様子で、森の場所を書き留めた。


ギルドを出ると、リネットが籠を抱えたまま立ち止まった。


「ミオさん、今日はありがとうございました。依頼を受けてくれたことも、森で守ってくれたことも」

「約束したでしょう。あの服が完成したら見せてもらわないと」

「はい!」


リネットは嬉しそうに笑った。


「銀糸草も採れましたし、今夜は徹夜で仕上げます!」

「そんなに急がなくてもいいわよ」


「私が早く完成させたいんです。明日、お店に来ていただけますか?」

「ええ。楽しみにしているわ」


リネットと別れ、宿へ向かう。

……明日が楽しみね。

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