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ツギハギも悪くない

「……ホホホ」

朝から《紫苑》のゴスロリ服を身に纏い、不敵に笑う。


深い紫と黒。

今日の私の気分にピッタリね。

さしずめ私は、紫の美魔女。


……美魔女って、綺麗な魔女って意味でよかったかしら?



少し遡って、昨夜のこと。

私は破られたワンピースを裁縫していた。


このくらいなら私にもできるでしょ?

……そう思ったのが間違いだった。


縫っては失敗を何度も繰り返す。

途中で心が折れそうになったけど、リネットが作ってくれた大切なワンピースを直したくて頑張った。


気がつけば翌朝。


……結果。

見るも無惨なツギハギまみれになりました。


……リネットに直してもらおう。


合わせる顔がない私は、徹夜のテンションも相まって、《紫苑》のゴスロリ服を身に纏う。


そう、今の私は紫の魔女。怖い物なんてないわ。

そう意気込んで、リネットの店へ向かった。


店に入ると、リネットがいつものようにカウンターにいた。

よし。美魔女らしく堂々と……


「ミオさん。おはようございます」

「おはよう、リネット。実は……」


ツギハギだらけの服を取り出す。


「ごめんなさい。破れたところを直そうとしたら、こんなことになって……大事な服なのに」


「大丈夫ですよ、ミオさん。服ですから、破れることくらいありますよ」


リネットは優しい笑顔でそう言った。

……リネットマジ天使。


「早速、奥で直してきます。ただ、ツギハギがすごいので……少し時間がかかりそうです」


「それなら私が店番をするわ。服を直してもらうからには、それくらいは役に立たせて」

「ありがとうございます、ミオさん。私は奥にいますから、何か困ったことがあったら呼んでください」


リネットは奥に行き、修理に取りかかる。

私は冷静になると、この格好で店番はちょっと違う気がして、魔法で着替えた。


リネットの店で買った服。

白いブラウスに、深緑のロングスカート。

派手ではないけど、色合いが綺麗で気に入っている。


一時間後、お客さんが来なくて暇な私は店内のリネットの服を眺めていた。


ガチャッ。

ドアが開き、見覚えのある顔が入ってきた。

ギルドの受付のエリナさんだ。


私服はシンプルで、髪も下ろしている。

いつもより少し大人っぽく見えた。


「あの……今着ている服は、お店の服ですか?」

「ええ、そう……」


おっと、今の私は素顔だった。

口調も変えなきゃね。


「はい。こちらはリネット様がお作りになった服でございます。僭越ながら、私も着させていただいておりますの」


……うん。

なんか、わけわからんキャラになった。


「そうなんですね……とてもオシャレです。前に見たときは、そこまで気にならなかったのですが……」


「ありがとうございます。

実際に着てみないと服の価値はわからないから……

いえ、わからないものでございますです。

きっとあなたにも似合うと思いますよ」


「でも、私なんかじゃ……貴女みたいに綺麗じゃないし……」

「ヤダ、エリナさんったら、お上手ね!」

「えっ?」


「コホン……失礼いたしました」


……危ない、危ない。


「この服が輝いて見えるのは、作ったリネットのおかげです。多少は私の美しさもあるのでしょうが……

大丈夫。きっと貴女にも似合いますよ」


私は彼女の手を握り、聖女にでもなったかのごとく振る舞った。


「ありがとうございます……。

あの、何着か買わせていただきます」


エリナさんは、何着か服を選んで買っていった。

帰り際、何故か少し顔が赤かったけど……大丈夫かな?


その後も、私が着ている服を見て、三人ほどお客さんが服を買っていった。


……どうやら、マネキン役として少しは役に立てたみたい。

リネットの服が認められるのは、なんだか嬉しい。


「ミオさん。終わりました」


辺りが暗くなるころ、リネットの声がした。


「リネット。これ……?」


修理された袖には、綺麗な模様が入っていた。

その中には、私が縫った不格好なツギハギまで、違和感なく残されている。


「はい。ミオさんの縫った部分も残しながら、この模様に仕上げてみました。かえって味のある良い服になったと思います」


「私の縫ったところ、残してくれたの?」

「せっかくミオさんが頑張って直したところですから」


……リネット。

本当にいい子ね。


「ありがとう……本当にすごく良いわ」

「ところで、何故こんな破れ方を?」

「それは……」


私は昨日の経緯を話した。


「ミオさんはDランクになったんですね! おめでとうございます」

「ええ、ありがとう。なんだかとんとん拍子だけど」


「お祝いに、今日は私にご馳走させてください。いいお店を知ってるんです」

「嬉しいけど、ご馳走してもらうわけには……」


「遠慮しないでください。最近、お店の売り上げもいいんですよ。行きましょう」

「そう?それじゃあ、お言葉に甘えるわね」


リネットに連れられて店へ向かう。

どうやら行きつけの店があるらしい。


「ここです」

「え……ここ?」


居酒屋だった。


「ここの厚切りベーコンの鉄板焼き、すごく美味しいんです。ぜひ食べてもらいたくて。ミオさん、最初はビールでいいですか?」

「ええ……いいわ」


「生ビールを二つください」


リネットは店員を呼び、慣れた様子で注文する。


……二つ?


ほどなくして、二つのジョッキが運ばれてきた。


「ミオさん、Dランク昇格おめでとうございます」

「ありがとう」


ジョッキを軽く合わせる。

するとリネットは、何の迷いもなくビールを口にした。


「……え?」

「やっぱりここのビール、美味しいです」


……ちょっと待って。

リネット、十二歳くらいよね?

まさか……不良?


私は二十歳からお酒を飲んだけど、周りには未成年で飲んでる子もいたし……。

今の時代そうなのかしら?


「ミオさん、どうしました?」

「あの……リネット。子供がお酒を飲むのは良くないと思うの。まだ成長期なんだし」


リネットはきょとんとした顔をした。


「私、十五歳ですよ」

「……え?」


思っていたより年上だった。


「それに、この国では十四歳から成人です」

「……成人?」

「はい。お酒も普通に飲めますよ」


……そうなの?

元の世界の感覚で、完全に子供だと思ってたわ。


「それより、このベーコン美味しいですよ」


……切り替え早いわね。

それなら遠慮なく楽しもう。


私もジョッキを手に取り、リネットともう一度乾杯する。


一人で飲むのも好きだけど、今日はいつもより楽しいかも。


私たちはそのまま、料理とお酒を楽しんだ。

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