仲良くなろう作戦
部屋中に並ぶゴスロリ家具。
いや、厨二家具?
……私の家は、すっかりゴス一色になってしまった。
今日も家でくつろいでいると、ステータス画面に通知があった。
なんだろう?こんなことは初めてだ。
開いてみると、誕生日特典と書かれている。
そう、今日は私の誕生日だ。
……25歳。まだまだ若い。
ゴスロリを着るには、少し歳なだけよ。
アイテムボックスを開くと、誕生日プレゼントの表示があり、ゴスロリ家具が一式入っていた。
……これ、あの文字を出してたやつから?
とりあえず、少しずつ出してみる。
《冥夜の安息棺》
棺桶みたいな天蓋ベッド。
ひどく趣味が悪いが、よく見ると……
効果:睡眠の質向上、疲労回復
……使うわ。
睡眠は大事。元の世界でもかなり寝る方だった。
他にも、椅子やクローゼットなど、様々な家具があった。
《奈落の冷蔵櫃》
黒い装飾箱。
効果:食品保存。冷蔵・冷凍切替。
……名前は物騒だけど、ただの便利な冷蔵庫ね。
中でも目を引いたのは浴槽だ。
《月影の美肌浴槽》
黒い猫脚バスタブ。
効果:入浴すると疲労回復+美肌+髪質改善。
……これもいい。
ありがたく使わせてもらおう。
家具を一から揃えると高いし、これでいいわ。
異世界に来て三週間が経過した。
仕事は、ギルドの依頼を受けたり、この力を活かして土木仕事を手伝ったりしている。
街の人達も変なゴスロリ美少女に慣れたようで、普通に接してくれている。
気になるのは、最近リネットと会っていないこと。
……あの約束の日から、一度もまともに話せていない。
この間も店の前まで行ったけど、いざとなると声がかけられなかった。
考えてみると、元の世界にも友人と呼べる人はいなかった。
……人との距離感が、いまいちわからない。
リネットと私の関係は、友達?ちょっと違う。
お客さんと店員?これはそうだけど、もう少し親しい気もする。
悩んでいても仕方がない。
翌日私は、【リネットと仲良くなろう作戦】を決行しに店へと向かった。
……さぁ、上手くやるわよ。
一日目。
店をそっと覗くと、リネットは忙しそう。
新しい服の制作中かな?
今日は出直しましょう。
お酒を買って帰る。
二日目。
店を覗くとお客さんが来ている。
遠くてハッキリ見えないけど、リネットより少し小さい少女が、可愛い服をたくさん買っていた。
良かったわね……リネット。
私が行くとお邪魔なので退散した。
三日目。
今日は「服を買いに来たわ!」と、明るく言って入るつもりだったけど、怖気づいて足が進まない……今日も無理。
お酒とつまみを多めに買って帰る。
四日目。
話しかけれない…………。
私はもしかしてコミュ障?
五日目。
家で酒飲んで寝た。
六日目。
今日も店の前まで来たけど、入れないかな……そう思って中を覗くと、リネットの様子がおかしい。
私は店のドアを開け、リネットの元へ急ぐ。
「リネット!大丈夫?」
「ミオさん……お久しぶりです。最近来ないから、どうしてるのかなって思ってました」
「それより大丈夫なの?」
「はい。三日くらい、まともに寝てないだけです。大丈夫です」
「三日も?大丈夫じゃないじゃない!」
「いえ、なんだか最近すごく調子が良いんです!新しい服もどんどん作れて……」
「あっ、この間は小さな女の子が服をたくさん買ってくれたんですよ。休んでなんかいられません」
そう言いながらも、リネットは今にも倒れそうな顔色をしている。
「今日はもう閉めて休みなさい」
「でも、あと少しだけ…」
本当にこの子は、服作りになると周りが見えなくなるわね。
……仕方ない。
私はリネットをお姫様抱っこした。
「ミッ、ミオさん……」
「しっかり捕まっていてね」
私は街中を四十キロほどの速度で走り抜ける。
……安全運転のつもりだったけど、リネットは少し怖そうだ。
家に着き、半ば強引にリネットを連れ込みベッドに寝かせた。
「あの……ミオさん。」
「いいから、目を閉じてみて。」
「はい……」
リネットはすぐに眠りについた。
早速、趣味の悪いベッドが役に立った。
こんな強引なことして、大丈夫だったかな?
でも、かなり疲れてたみたいだし……
数時間後、リネットが目を覚ました。
「あれ?私、寝ちゃって……」
リネットはゆっくり体を起こし、腕を軽く動かした。
「すごい……体が軽いです」
「リネット、勝手に連れてきてごめんなさい」
「え?」
「休んでって言っても聞かなかったから……ちょっと強引すぎたかなって」
リネットは少し驚いたあと、首を横に振った。
「そんなことないです。むしろ、ありがとうございます。私……少し無理しすぎてたみたいです」
「……怒ってない?」
「怒るわけないですよ」
……良かった。
少しだけ、肩の力が抜けた。
「それにしても、ミオさんのお家、すごいですね……」
……しまった。ゴス家具のままだった。
痛い厨二女に見られてしまう。
「これは、その……勝手に送られてきた物というか、決して私の趣味ではなくて……」
「すごい!可愛い物ばかりです。さすがミオさん」
リネットは、目を輝かせながらゴスロリ家具を眺めていた。
……リネットなら大丈夫だったわね。
「そういえば、ミオさん」
「なに?」
「最近、どうしてたんですか? 全然来ないから、少し気になってました」
「えっ……」
どうしてたと言われても。
店の前まで行って、話しかけられなくて帰ったり、店を覗いてリネットの様子を伺ったり……。
思い出すと私ちょっと怖い?
あとは、お酒を買って家で飲んで寝たり。
とても言える内容じゃない……。
「その……いろいろあって」
「そうなんですね」
リネットは少しだけ私の顔を見て、それ以上は聞かずにいてくれた。
「あの……また今度、素材採取に行こうと思ってるんです。今度もミオさんに護衛をお願いしてもいいですか?」
「ええ。もちろん!」
私は食い気味に答えた。
リネットはほっとしたように笑った。
「よろしくお願いします、ミオさん」
……仲良くなろう作戦。
結局、成功かな?




