専属ガイド
「あの…っですから、シリス様! 送っていただく必要などございませんわっ……!」
「ダメだ。俺のガイドに何かあったらどうする」
校長室を出てからというもの、私のすぐ隣をピッタリと歩くシリス様。
あまりの距離の近さに、すれ違う生徒たちが「え……?」「嘘でしょ……!?」「ヴェルハイト様が人間に……!?」と目を丸くしてパニックを起こし、廊下は大騒ぎになっていた。
昨日まで孤高で冷徹だった絶対者が、人間である私に甘い眼差しを向け、過保護に庇うように歩いているのだから当然である。
(うう……目立たないように静かに過ごすはずだったのに、完全に真逆の方向に行ってるわ……!)
私が頭を抱えていると、前方から見知った人物が歩いてきた。
「あ、シリス! 探したぞ、朝からどこに行って……って、ええぇぇっ!?」
派手な赤髪を揺らしてやってきたのは、同じく特殊科のイグニス先輩だ。
私とシリス様が並んで歩いている姿を見て、目を点にしている。
「君は…確か…フィオナ、ちゃんだよね!? お前ら、なんで一緒に……というかシリス、なんでそんなに嬉しそうな顔してんだよ!?」
「イグニスか。フィオナは今日から俺の専属ガイドになった。邪魔をするな」
「へ……!? 専属……!? 待て待て、昨日言ってた『世界で唯一の』って、そーゆうっ?…マジだったのかよ……!?」
イグニス先輩が顎が外れそうなほど驚愕する横で、シリス様は当然といった様子で私の肩に軽く手を回した。
「そういうわけだから、フィオナに気安く近づくなよ」
「独占欲爆発させるの早すぎだろ……!?」
(…… イグニス先輩、助けてください……っ!)
激甘かつ激重な保護者と化したシリス様に引きずられるようにして、ついにガイド科の私の教室前へと到着してしまった。
「……では、フィオナ穣。放課後、ここで待っているからな」
「えっ、放課後もですか!?」
「当たり前だ。一緒に帰る」
当然のように言われ、教室中の生徒たち(昨日私をイジめていたお嬢様たちも含めて)が青ざめた顔でこちらを凝視している。
「……それと」
シリス様は教室に入る直前の私を引き留めると、私の手首にそっと指先を滑らせ、囁くような甘い声で言った。
「何か嫌なことがあったら、すぐに俺を呼ぶんだ。……いいね?」
「っ……! は、はい……分かりましたから、早くお戻りになってくださいっ!」
顔を真っ赤にした私は、逃げるように教室へと飛び込んだ。
教室の後ろの席に逃げ込み、机に突っ伏して深呼吸をする。
周りからの視線は相変わらず刺さるようだったけれど、その質は明らかに嘲笑から嫉妬と驚愕へと変わっていた。
(どうしよう……。これから毎日、シリス様のペースに巻き込まれちゃうのかしら……!?)




