自覚
額を重ねられたまま、図書室の静けさの中でシリス様の温もりに包まれる。
トックン、トックンと、お互いの鼓動が重なり合うように響いていて、自分の顔がどんどん熱くなっていくのが分かった。
「……シリス様……」
「……ごめんね。驚かせてしまったかい?」
シリス様はそっと額を離すと、愛おしそうに私の頬に指先を添えた。その青い瞳には、吸い込まれそうなほどの優しさと情熱が宿っている。
「でも……君がこうして側にいてくれるだけで、俺の心はこんなにも満たされるんだ」
「シリス様……っ」
その甘い眼差しで見つめられるたび、胸の奥がぎゅーっと締め付けられて、息がうまくできなくなる。
図書室を出て、夕焼けに染まる廊下を二人で並んで歩いている間も、シリス様がさりげなく握ってくれた手の温もりが心地よくて、離したくないと思ってしまっている自分がいた。
(私……どうしちゃったのかしら……)
自室に戻っても、胸のドキドキは一向に収まらなかった。
ベッドに腰掛け、両手で自分の真っ赤な頬を包み込む。
シリス様に抱きしめられた時の、あの高鳴る鼓動。
耳元で囁かれたときの、背筋がゾクゾクするような甘い感覚。
他の男の人と話している時にシリス様が見せた、少し嫉妬したような表情への愛おしさ。
(『専属ガイド』だから……? シリス様が『番』だから……? いいえ、違うわ……)
ガイドとしての義務感でも、運命という言葉に流されているわけでもない。
ただ、シリス様という一人の男性の笑顔が見たい。
シリス様の特別な存在でありたい。
シリス様に「可愛い」と言われるだけで、飛んでいってしまうくらい嬉しくなってしまう。
(……あぁ、そうだったんだ……)
胸の奥でずっと甘くモヤモヤしていたものの正体が、すとんと落ちていく感覚がした。
この切なくて、苦しくて、でもたまらなく愛おしい気持ち。
(私……シリス様のことが、好きなんだ……)
恋なんて知らなかった私が、初めて知った一人の男性への想い。
それを自覚した瞬間、シリス様の顔が思い浮かんで、私は枕に顔をうずめて「〜〜〜っ!」と声を殺して悶えてしまった。
(好き……私、シリス様が好き……! どうしよう、明日シリス様の顔、どんな顔をして見たらいいの……っ!?)
恋心を完全に自覚してしまったフィオナの夜は、照れくささと幸せで、まったく眠れそうにないものになったのだった。




