↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
23/25

自覚

 額を重ねられたまま、図書室の静けさの中でシリス様の温もりに包まれる。

 

トックン、トックンと、お互いの鼓動が重なり合うように響いていて、自分の顔がどんどん熱くなっていくのが分かった。


「……シリス様……」

「……ごめんね。驚かせてしまったかい?」


 シリス様はそっと額を離すと、愛おしそうに私の頬に指先を添えた。その青い瞳には、吸い込まれそうなほどの優しさと情熱が宿っている。


「でも……君がこうして側にいてくれるだけで、俺の心はこんなにも満たされるんだ」


「シリス様……っ」

 その甘い眼差しで見つめられるたび、胸の奥がぎゅーっと締め付けられて、息がうまくできなくなる。


 図書室を出て、夕焼けに染まる廊下を二人で並んで歩いている間も、シリス様がさりげなく握ってくれた手の温もりが心地よくて、離したくないと思ってしまっている自分がいた。


(私……どうしちゃったのかしら……)

 自室に戻っても、胸のドキドキは一向に収まらなかった。


 ベッドに腰掛け、両手で自分の真っ赤な頬を包み込む。


 シリス様に抱きしめられた時の、あの高鳴る鼓動。

 耳元で囁かれたときの、背筋がゾクゾクするような甘い感覚。


 他の男の人と話している時にシリス様が見せた、少し嫉妬したような表情への愛おしさ。


(『専属ガイド』だから……? シリス様が『番』だから……? いいえ、違うわ……)


 ガイドとしての義務感でも、運命という言葉に流されているわけでもない。

ただ、シリス様という一人の男性の笑顔が見たい。


シリス様の特別な存在でありたい。


シリス様に「可愛い」と言われるだけで、飛んでいってしまうくらい嬉しくなってしまう。


(……あぁ、そうだったんだ……)


 胸の奥でずっと甘くモヤモヤしていたものの正体が、すとんと落ちていく感覚がした。

この切なくて、苦しくて、でもたまらなく愛おしい気持ち。


(私……シリス様のことが、好きなんだ……)


 恋なんて知らなかった私が、初めて知った一人の男性への想い。


それを自覚した瞬間、シリス様の顔が思い浮かんで、私は枕に顔をうずめて「〜〜〜っ!」と声を殺して悶えてしまった。


(好き……私、シリス様が好き……! どうしよう、明日シリス様の顔、どんな顔をして見たらいいの……っ!?)


 恋心を完全に自覚してしまったフィオナの夜は、照れくささと幸せで、まったく眠れそうにないものになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。