第69話 帰ったら伝える言葉
その夜、《帰還灯》の本部を空にした。
患者は町の診療所へ分散し、記録は三都市へ送った。俺たちは旧水道管理所を臨時拠点にする。
教会は俺、リゼ、ティナ、フィン、ドーガ、アレクシスを神敵として指名した。
明日の王国評議会で証言できなければ、布告だけが事実として残る。
夜更け、地上の様子を見に出ると、リゼが水門の上に座っていた。
「見張りは交代の時間だぞ」
「あなたもです」
隣へ座る。
ラクトの街には、小さな青い灯が点々と残っていた。教会を恐れて消した家もある。それでも、全ては消えなかった。
「明日、評議会へ入る役は俺一人でいい」
「却下します」
「まだ理由を言ってない」
「自分だけ捕まれば皆は助かる、でしょう」
読まれていた。
リゼが俺の左手を取る。《広域撤収》を使った時の火傷痕がまだ残っている。
「全員を帰すと言う人が、自分だけ人数から外れるのは反則です」
「分かってる。でも、失うのが怖い」
「私も怖いです」
盾騎士の手が、わずかに震えていた。
「だから約束してください。明日が終わったら、ここへ一緒に帰ると」
「約束する」
「帰ったら、あなたに伝えたい言葉があります」
横顔は暗くて見えない。耳だけが赤かった。
何の言葉か尋ねるほど、鈍くはない。
「俺にもある」
「今、言ってはいけません」
「どうして」
「帰る理由が一つ増えます」
俺たちは手をつないだまま、灯を見た。
明日、勝つために行くのではない。
帰って、続きを言うために行く。
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