第67話 勝利の祝福の正体
ドーガが持ち帰った点検板には、赤い晶石が埋め込まれていた。
帰還灯へ近づけると、青い炎が外ではなく晶石の内側へ吸われる。
「反対向きの帰還灯じゃ」
ドーガが顔をしかめる。
「人を外へ送るんでなく、魔力を中へ引きずり込んどる」
救出した囚人の中に、聖堂の元記録官がいた。
彼は点検板の古代文字を見て、唇を震わせた。
「これは《奉還炉》の部品です。私は寄進記録だと教えられていた」
彼が記憶を頼りに、番号の読み方を教える。
フィンが中央本部から押収した裏帳簿と照合した。
迷宮で死者が出た日、同じ数の《魂滓》が教会へ納入されている。バルガスが掘らせた違法な赤晶は、その流れを集めるための導線だった。
死の際に散る魔力と記憶の欠片を吸い上げ、聖印へ送り返す。
それが、騎士と勇者へ与えられる《勝利の祝福》の正体だった。
「死者が増えるほど、聖印が強くなる」
ティナが青ざめる。
「そして強い祝福が、もっと無謀な戦いを可能にする」
俺は記録をめくった。
見覚えのある日付がある。
《金獅子》が崩落迷宮へ入った日。
回収数、二。
ロルフとセシルの冒険者番号が並び、処理欄には『勝利へ奉還済み』と記されていた。
紙を持つ手が震える。
「あいつらは、勝利の材料じゃない」
ガレスが隣で拳を机へ押しつけた。
「俺が退かなかったせいで死んだ。それを、連中は祝福と呼んだのか」
怒りだけでは証拠にならない。
俺たちは帳簿、点検板、救出者の証言を三都市へ同時に送った。一か所を焼かれても消えないよう、写しを百部作る。
最後の写しが出た時、遠話水晶が光った。
王都へ戻っていたアレクシスからだった。
「ユアン。大司祭は明朝、俺に《帰還灯》討伐を命じる」
短い沈黙の後、勇者は言った。
「その前に、俺自身の目で証拠を見せろ」
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