表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外れスキル《撤収》しかない転生者、全員生還の冒険者ギルドを作る ~「逃げたら負け」の異世界ですが、命を持ち帰る俺たちが攻略率一位です~  作者: kaiくん
第七章 撤退禁止令

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/71

第66話 歩いて帰る

白鎧が監獄へ雪崩れ込む。

 リゼは退かず、盾を床へ打ち立てた。

「ここから先は、患者の通路です!」

 槍を正面から受け、横へ流す。二本目を盾の裏で絡め、持ち主ごと壁へ転がした。

 その間にドーガが天井の鎖を切る。

 鉄格子が落ち、追手との間を塞いだ。

「三分しか持たんぞ!」

「三分あれば、二つ先の角まで行けます」

 フィンが先導する。

 暗い排水路を怖がっていた少年が、今は三十四人の道を選んでいた。

 旧礼拝堂の階段では、担架が曲がれない。

 ドーガが手すりを外して即席の滑り台を作り、負傷者を一人ずつ下ろす。

 香炉庫では追手が先回りしていた。

 ティナが大袋の眠り香を蹴り倒し、俺たちは濡れ布で口を覆って抜けた。倒れた騎士も煙で窒息しないよう、囚人の二人が廊下の外へ引きずる。

「敵まで助けるのか」

「死なせないために逃げたんです」

 脱走兵の隊長が言った。

 地下厨房の先で、道が二つに分かれた。

 右は荷車門。左は大聖堂のさらに深部。

 左から、心臓の鼓動のような低音が響く。隙間の向こうに、巨大な赤い輪が見えた。

 ドーガが一瞬だけ立ち止まり、壁の点検板を引き抜く。

「証拠じゃ。逃げながら持ち帰れる物だけ持つ」

 全員が荷車門へ向かった。

 最後の錠を壊すと、冷たい夜風が吹き込む。

 結界の境界を越えた瞬間、三十四本の青い線が戻った。

《撤収、使用可能》

 能力が告げる。

 だが、俺は発動しなかった。

 通りの両側に、市民が青い灯を掲げていた。

 墓守が知らせ、マルコたちが出口まで道を作ってくれたのだ。

「帰還灯まで、あと三百歩です」

 リゼが言う。

「歩けるか」

 俺が尋ねると、脱走兵の隊長は添え木の脚を引きずって笑った。

「仲間に肩を借りれば」

 担架も、負傷者も、助けに入った俺たちも。

 三十四人と五人は、誰一人欠けず、自分たちの灯まで歩いて帰った。

---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ