第65話 スキルの届かない結界
もう一度です!」
リゼが盾で扉を支えながら叫ぶ。
俺は登録札を握り直した。
「《隊列撤収》!」
青い光は生まれない。
体内から魔力を引かれる感覚すらなかった。
ドーガが床へ小さな赤晶片を置く。普段なら帰還灯に反応する石が、黒く濁った。
「結界じゃ。魔法を弾くんじゃない。外へ向かう流れだけ、地下へ吸っておる」
「最初から、俺たちを誘い込む罠だった?」
フィンの顔が青ざめる。
「違う」
俺は壁に刻まれた古い溝を見る。
この設備は、俺たちのギルドができるよりはるか昔からある。教会は常に、ここから誰も逃がさないために使っていた。
扉が大きくへこんだ。
猶予は一分もない。
救助対象は三十四人。うち九人は自力で歩けず、五人は治療途中。元来た排水路は狭く、担架が通らない。
俺は能力欄を閉じた。
「計画を変える」
「他の帰還点を試さないのですか」
リゼが聞く。
「ここにいる限り、全部同じだ。使えない道へ命を賭けない」
フィンの地図を床へ広げる。
旧礼拝堂、香炉庫、厨房、荷車門。最短路ではなく、担架が通れ、追手を分断できる道を探す。
「フィン、出口を決めろ。ドーガ、扉を遅らせる仕掛け。ティナ、歩ける者を増やしてくれ。リゼは最後尾」
「ユアンさんは?」
ティナが尋ねる。
「人数を数える」
俺は囚人たちを見る。
「転移はできない。今夜は、自分の足で帰る」
隊列を四つに分ける。
先頭が動き出した瞬間、監獄の扉が破られた。
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