第64話 聖堂監獄救助
夜半、俺たちは大聖堂裏の共同墓地へ入った。
墓守はメルドから避難した老人だった。
「何も見ていない」
そう言って、地下納骨堂の鍵を開けてくれる。
フィンの地図では、納骨堂の奥に百年前の排水路がある。現在の聖堂図面から消されている道だ。
「暗いな」
ドーガが小声で言う。
「言わないでください」
先頭のフィンは震えていた。それでも足は止まらない。
三つ目の分岐で立ち止まり、壁の湿り気を指で確かめる。
「右です。左は新しい漆喰で塞がれています」
ドーガが音を立てずに鉄格子を外した。
監獄には、ティナたち以外にも二十六人いた。
撤退を口にした騎士、命令違反の冒険者、逃げてきた農民。誰も裁判を受けていない。
「帰還灯です」
俺は小声で名乗った。
「ここから出たい人は、手を挙げてください。一人も置いていきません」
最初は誰も動かなかった。
罠を疑っている。
奥の房からティナが顔を出した。
「本物です。少し無茶をするところまで、いつものユアンさんです」
「そこは保証しなくていい」
笑いが漏れ、手が一つ、また一つと上がった。
三十四人全員の同意を取り、登録札へ触れてもらう。歩けない者は担架へ固定した。
リゼが廊下の角で見張りを倒す。剣は抜かず、盾の縁で手首を打った。
「増援、二分で来ます」
「十分だ。帰還点は墓地の外に設定してある」
俺は青い線を探した。
いつもなら全員と俺をつなぐ線が、一本も見えない。
《撤収》
何も起きなかった。
二度目も同じだった。
鐘が鳴る。
廊下の向こうで、白い鎧が一斉に動き始めた。
---




