第63話 脱走者を治した罪
教会の布告から三日後、七人の兵士が裏口へ運び込まれた。
全員、王都方面の巡礼路を守る聖堂兵だった。
腕に火傷、背中に裂傷。隊長らしい男は、右脚の骨が見えていた。
「何があった」
「赤晶獣の群れです」
付き添ってきた少女が答えた。
「司祭は、勝利するまで陣地を離れるなと。でも矢も治癒薬も尽きて……この人たちは負傷者を連れて退きました」
つまり脱走扱いだ。
ティナは事情を聞き終える前に、隊長の脚を固定していた。
「治療には二時間かかります。話はその後で」
彼女の治癒は遅い。だからこそ、潰れた神経も千切れた筋も丁寧につなげられる。
一時間が過ぎた頃、正面扉が破られた。
白鎧の聖堂騎士が十二人。
「脱走兵を引き渡せ。治療者も、神敵幇助の罪で拘束する」
リゼが盾へ手をかける。
俺は人数と出口を数えた。ここで戦えば、寝台の負傷者が巻き込まれる。
「治療が終わるまで待て」
「異端者に交渉権はない」
騎士がティナの腕をつかんだ。
小柄な彼女は振りほどかず、俺を見た。
「あと十二分です」
震えているのに、声だけは正確だった。
「そこまでは、誰にも触らせません」
俺たちは負傷者の寝台を囲んだ。
十二分間、騎士とにらみ合う。
最後の包帯を巻き終えると、ティナは自分から両手を差し出した。
「この人たちには、移送中も添え木が必要です」
「ティナ」
「ここで争えば患者が傷つきます。大丈夫です」
手枷が閉じる。
七人の兵士とティナは、凱旋大聖堂ラクト支院の監獄へ連行された。
騎士たちが去るまで、俺は動かなかった。
扉が閉まった瞬間、フィンへ言う。
「聖堂の地下図面は」
「旧排水路までならあります」
ドーガは工具袋を背負い、リゼは盾を取った。
「患者を置いてきた」
俺は救助登録札を握る。
「全員、迎えに行く」
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