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外れスキル《撤収》しかない転生者、全員生還の冒険者ギルドを作る ~「逃げたら負け」の異世界ですが、命を持ち帰る俺たちが攻略率一位です~  作者: kaiくん
第七章 撤退禁止令

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第62話 看板を下ろす日

石が窓を割った。

 幸い、受付に人はいなかった。

 壁には黒い塗料で『臆病者』と書かれている。

「消してきます」

 ハンスたちが雑巾を持とうとしたので、俺は止めた。

「今日は全員、裏の訓練場から出るんだ。子供は表に立つな」

 抗議だけではない。

 《生還共済》の加入者は半分が解約を申し出た。教会の治癒を受けられなくなるのが怖いのだ。

 その判断を責めることはできない。

 俺は木製の看板を見上げた。

 青い灯を描いた、最初から使っている看板だ。

「一度、下ろそう」

 倉庫が静まり返る。

「俺たちへ依頼しただけで、一般人まで罰せられる。表向きの営業を止めて、救助受付を各診療所へ分散する」

「ギルドを閉じるのですか」

 リゼの声は平静だったが、手が固く握られていた。

「潰すんじゃない。守るために隠す」

「同じことを、あなたは自分にも言います」

 言い返せなかった。

 看板を下ろせば、教会が狙うのは俺だけになる。そんな計算があった。

 脚立へ上ろうとすると、扉が開いた。

 メルドの老人が、青く塗った小さな板を抱えている。その後ろにはベルナの船頭、ハルクの兵士、王都競技会で救った観客までいた。

「看板が大きすぎるから狙われるんだろ」

 老人は小さな板を俺へ押しつけた。

「なら、みんなで持てばいい」

 板には不格好な帰還灯が描かれていた。

 通りの向かいで、商人マルコも同じ印を店先へ掛ける。

「うちも救助受付です。取引を切りたい商会には切らせますよ」

 次々に、青い灯が街へ増えていく。

 俺は脚立へ上った。

 古い看板を外し、割れた窓の内側へ移す。

 外からは見えない。だが、中に入った者には一番よく見える場所だ。

「表の看板は下ろす。救助は続ける」

 仲間たちがうなずいた。

 ギルドは建物の名前ではない。

 同じ灯を持ち、誰かを帰そうとする人間の集まりだ。

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