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外れスキル《撤収》しかない転生者、全員生還の冒険者ギルドを作る ~「逃げたら負け」の異世界ですが、命を持ち帰る俺たちが攻略率一位です~  作者: kaiくん
第六章 三都市大避難

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第58話 千人帰還

ハルク迷宮が完全に開いた。

 黒い霧とともに現れたのは、これまでの倍を超える群れだった。避難はまだ千七十二人残っている。

 帰還灯網で一度に送れるのは百人ほど。十回以上繰り返す時間はない。

「全灯の登録を俺へ集める」

「体がもちません」

 ティナが止める。

「集めるだけだ。前回の《連鎖撤収》を、都市規模へ広げる」

 各中継点から名前が届く。

 事前救助同意は避難登録時に取ってある。千七十二本の青い線が、帰還灯網を埋めた。

 左手が焼けるように熱い。

《広域救助登録、千名を確認》

《帰還網との適合率が基準を超過》

《《広域撤収》を解放します》

 青い線が、俺一人へ集まるのをやめた。

 灯から灯へ、人から人へつながり、巨大な円を作る。俺は中心ではなく、流れを開く鍵になった。

「全中継点、点呼!」

 遠話水晶から返事が重なる。

「ベルナ、準備完了!」

「ハルク西門、完了!」

「北牧場、全員登録!」

 リゼが俺の隣へ立つ。

「一人で持たないで。私たちもいます」

「開くぞ。《広域撤収》!」

 三都市の青い灯が、夜明けのように輝いた。

 住民の姿が一斉に光へ溶け、河原の主帰還点へ現れる。受け入れ班が家族ごとに点呼し、空いた場所へ次の群れを誘導する。

 千人を超える帰還が、一分で完了した。

 最後の名を確認した瞬間、足から力が抜ける。

「ユアン!」

 地面へ落ちる前に、リゼが抱き止めた。

 視界が暗い。魔力だけでなく、意識まで帰還網へ引かれたようだった。

「全員……いるか」

「千七十二名、全員です」

「なら、少し休む」

「少しでは足りません」

 叱る声を聞きながら、俺は意識を失った。

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