第57話 盾騎士も帰らなければならない
ベルナ最後の避難列は、橋の中央で止まっていた。
荷車の車軸が折れ、老人と子ども三十人が取り残されている。背後から魔物の群れが迫る。
リゼは橋の町側へ一人で立っていた。
「荷車を捨てて、歩ける人から渡って!」
大盾へ魔物がぶつかる。
一体、二体。彼女は押し返すが、橋板が砕け始めた。
俺たちが着いた時、最後の子どもが河原側へ渡った。
「リゼ、撤収!」
「まだ橋に兵が二人います!」
「アレクシスが回収する!」
勇者が雷をまとい、兵二人を抱えて跳ぶ。
リゼは残った。
「私が盾を外せば、群れが避難列へ――」
「橋を落とす準備ができている!」
ドーガが支柱へ仕掛けた楔を示す。
「君が帰れば落とせる!」
それでも彼女は盾を握っている。
守る者ほど、自分を最後の一人にしやすい。
「リゼ・カルドナ!」
俺は帰還紋を掲げた。
「《帰還灯》ギルド長として命じる。撤収しろ!」
彼女が振り返る。
「君だけを例外にしない。帰ると約束しただろ!」
魔物の爪が盾を削る。
リゼは一瞬目を閉じ、うなずいた。
「帰還に同意します!」
青い線がつながる。
彼女が河原へ転移した直後、ドーガが楔を打った。橋の中央が落ち、魔物の群れが川へ飲まれる。
リゼは膝をつき、傷だらけの盾を抱えていた。
「すみません。また、自分だけ残ろうとしました」
「俺も何度もやる。だから互いに命令しよう」
俺が手を差し出す。
リゼはつかんで立ち上がった。
「次は私が、あなたを帰します」
その約束は、遠い未来ではなく、翌日に必要になった。
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