第54話 灯をつなぐ
帰還灯網の試験は、失敗から始まった。
一基目と二基目を一里離してつなぐ。俺が発動すると、送った土嚢が途中で消え、川へ落ちた。
「生き物で試さなくて正解でした」
ティナが青ざめる。
「魔力の向きがずれとる」
ドーガが中継器を分解した。
古代の部品は、中央へ吸い込む向きに組まれている。俺たちが使いたいのは、各都市から河原へ出す流れだ。
「歯車を逆にすれば?」
「割れる。逆回転を想定しとらん」
フィンが三都市の高低差を見比べる。
「機械を逆にせず、灯の設置順を逆にしたらどうでしょう。低い河原から高い都市へ、帰還点を伸ばしていく」
試すと、青い線が安定した。
二里、三里。
中継点には二人ずつ操作員を置き、片方が倒れても止まらないようにする。操作手順は三枚ではなく、一枚へ減らした。
ハンスたちが何度も伝令訓練を行う。
六日目、ベルナと河原がつながった。
七日目、メルド。
八日目の夜、最後の灯をハルクへ運ぶ途中で魔物に襲われた。
リゼが荷車を守り、アレクシスが群れを追い払う。
ハルク伯は城門の上から見ていた。
「そこまでして、我々を逃がしたいのか」
「逃がしたいのではありません」
俺は灯を地面へ固定する。
「大氾濫の後、ここへ帰ってきてもらいたいんです」
伯はしばらく黙り、城門を開けた。
「住民へ避難登録を許可する。ただし私は最後まで残る」
「最後の一人と一緒に帰ってください」
「命令するな」
「契約条件です」
ハルクにも、青い灯がともった。
三都市が一本の光でつながる。
大氾濫まで、四日。
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