第53話 三つの町、一つの帰還点
大規模な《連鎖撤収》には、魔力を受け止める主帰還点が必要だ。
現在の俺に維持できる主点は一つだけ。
三都市の距離は、それぞれ馬で半日。どこへ置いても、残る二都市は範囲外になる。
「ベルナは人口千二百。メルドは八百。ハルクは五百」
作戦会議で、王国軍の将軍が数字を並べた。
「最大人数のベルナを優先すべきだ」
「迷宮の膨張が最も激しいのはハルクです」
フィンが反論する。
「危険度ならハルク、救える数ならベルナか」
誰かが選ばなければならない。
視線が俺へ集まる。
《撤収》を持つ者が決めろということだ。
前世でも、救助の優先順位は必要だった。生存可能性、緊急性、必要人数。感情だけで全員へ向かえば、全員を失う。
それでも、地図の上の数字が人の顔に見えた。
「主帰還点は、三都市の中には置きません」
「ではどこへ?」
「中間の河原です。三都市から小型灯をつなぐ」
「範囲が足りないと言っただろう」
「今のままなら」
俺はドーガを見る。
彼は待っていたように、布を外した。
台車へ積まれているのは、赤晶鉱山で回収した古い中継器と、六基の移動式帰還灯。
「帰還点を固定された場所だと思うから一つしか置けん。灯同士で魔力を渡し、道を伸ばす」
「実験もしていない装置だぞ」
「だから今から試します」
将軍が反対しかけ、アレクシスが口を開いた。
「失敗した場合、俺が各都市の退路を守る。それでも歩いて避難させる」
勇者の保証に、会議が動いた。
選ばないというのは、決断しないことではない。
三つとも選べる仕組みを作るため、残り九日を使う。
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