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外れスキル《撤収》しかない転生者、全員生還の冒険者ギルドを作る ~「逃げたら負け」の異世界ですが、命を持ち帰る俺たちが攻略率一位です~  作者: kaiくん
第六章 三都市大避難

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第52話 逃げない町

避難を拒んだのは領主だけではなかった。

「畑を置いて、どこへ行けっていうんだ」

「祖父も父も、この土地を魔物から守った。俺たちも戦う」

 住民説明会で、怒りと不安がぶつけられる。

 避難先の河原には家も仕事もない。戻れる保証もない。逃げろという言葉だけでは、人は動かない。

「畑を捨てろとは言いません」

 俺は地図を壁へ貼った。

「避難は十二日間。家畜は北の共同牧場へ。食料倉は封印し、商人組合が損害を保証する。大氾濫後、帰還班が安全を確認してから全員で戻ります」

 マルコが保証書を掲げた。

「三都市の作物は、我々が通常価格で買い取る。避難に応じた家へ前金を出す」

 それでも、老人が首を横に振る。

「逃げた家の墓は、誰が守る」

 リゼが答えた。

「墓石は守れても、家族を失えば祈る人がいなくなります」

 静けさが落ちた。

 彼女は騎士団を追われた経緯を話した。土地と功績を守ろうとして、命令に従った者が谷で死にかけたこと。新人を連れて撤退した自分が臆病者と呼ばれたこと。

「私は今も、あの撤退を恥じていません」

 全員が納得したわけではない。

 だが、避難登録の机へ最初の家族が来た。

 夕方までにベルナ住民の三割。メルドは一割。砦都市ハルクはゼロ。

 その夜、ハルク迷宮から魔物が一群あふれた。

 小規模だったが、門外の牧場が襲われる。

 騎士が撃退したあと、教会司祭は勝利を宣言した。

 俺は倒れた魔物の向きを調べた。

 全て、街へ攻めてきたのではない。

 迷宮から逃げていた。

 本当の群れは、その後ろにいる。

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