第48話 百二十七人の同時帰還
王都事故で中央席に残された百二十七人を救うには、従来の《撤収》では足りなかった。
一度に十二人。再使用まで十二分。
崩落は五分後に迫っていた。
あの時、俺の帰還紋に新しい文字が浮かんだ。
《累計生還者百名を確認》
《《連鎖撤収》を解放》
複数の帰還点を一つの網としてつなぎ、登録を分担できる技能。
俺は競技場にあった演出用灯石を四か所へ置いた。
リゼと騎士団が観客を四群へ分け、それぞれで救助同意を取る。王太子は自ら一つの灯を持ち、民衆へ呼びかけた。
「私ではなく、動けない者を先に!」
四つの灯から青い線が伸びる。
百二十七本。
それを一度に俺へ集めれば、体がもたない。だから線を群れごとに結び、隣の帰還点へ渡し、最後に入口の大灯へ流す。
「第一灯、接続!」
「第二灯、同意確認!」
騎士たちが復唱する。
事故前には撤退を笑っていた者も、手順を守って列を作った。
「《連鎖撤収》!」
青い光が競技場を一周した。
一群ずつ、一呼吸ほどの間を置いて姿が消える。入口の広場へ到着した人々を、地上救護班が受け止める。
最後の群れには俺とリゼも入った。
転移直後、中央席が完全に崩れた。
点呼に要した時間は、十五分。
帰還そのものは、四十八秒。
百二十七人、欠員ゼロ。
技能を使ったのは俺だ。
けれど、俺一人では一人も登録できなかった。
王太子、騎士、観客、救護班。全員が一つの帰還網になったから成功した。
「俺のスキルじゃないな」
事故後の記録を見ながら呟くと、リゼが首を傾げた。
「では、何ですか?」
「みんなの撤収だ」
その言葉を、彼女はうれしそうに記録書へ書き加えた。
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