第47話 勝たずに終わらせる
訓練迷宮の中央へ、二十人の志願者が散らばった。
アレクシスは聖剣一本。
俺は短剣、救助札、白墨、五個の小型灯。
開始鐘が鳴る。
勇者は正面路を駆け、現れた魔導人形を一撃で破壊した。速い。俺が一人目へ着く前に、三体を倒して二人を安全地帯へ送っている。
「やはり勇者だ!」
観客席が沸く。
俺は競わず、志願者へ小型灯を渡した。
「動ける人は、青い印をたどって次の人へ。到着したら手をつないで待て」
《複数帰還点》を迷宮の四隅へ設置する。
アレクシスは人形を倒しながら、一人ずつ中央へ運ぶ。俺は四人、五人と小集団を作り、帰還同意をまとめて取った。
途中、巨大な人形が中央路を塞いだ。
アレクシスの聖剣が火花を散らす。
俺は戦わず、横の整備路へ入る。フィンから教わった図面の読み方で、壁裏の通路を見つけた。
「こちらへ!」
九人を東の帰還点へ集める。
《隊列撤収》。一斉に安全地帯へ。
アレクシスが巨大人形を倒した時、残る志願者は三人だった。
彼が二人を抱え、一人を背負う。
俺は手を出さず、安全地帯への扉を開けた。
同時に全員が線を越える。
「勝者、判定を――」
審判が迷う。
アレクシスは息を切らし、俺を見た。
「最後の三人を、なぜ先に撤収させなかった」
「君が運べていたからだ。奪い合う必要はない」
「決闘だぞ」
「二十人全員が帰った。もう戦う理由がない」
観客席は静かだった。
やがて、救助役を務めた志願者の一人が拍手する。次々と音が重なった。
アレクシスは長い間黙り、聖剣を鞘へ戻した。
「引き分けでいい」
「最初から勝者は二十人だ」
「そういう言い方が気に入らん」
口ではそう言いながら、彼も少し笑っていた。
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