第46話 勇者の決闘申し込み
競技場事故から三日後。
死者はゼロ。重傷者九名も、王都治癒院で安定した。
《帰還灯》の実演を笑った新聞は、翌朝には《王都を救った撤収》と見出しを変えた。
俺たちは王宮の客室で事情聴取を受けていた。
魔力管の爆発は、整備不足と判明した。教会が競技場へ過剰な祝福を流し、古い管が耐えられなかったらしい。
廊下へ出ると、アレクシスが待っていた。
「事故を収めた手腕は認める」
「素直だな」
「だが、お前の主張が正しいとは限らない」
鉱山で何度も撤収したことを、彼はまだ自分の未熟さだと思っている。
「俺が魔力管を一撃で凍結していれば、避難は不要だった」
「爆発前に場所が分かればな」
「だから強さには、速さも判断も含まれる」
筋は通っている。
アレクシスは俺を嫌っているのではない。自分が強くなれば全員救えると、本気で信じている。
「決闘しろ」
「俺が君に勝てると思うか?」
「剣の勝負ではない。競技会の救助部門をやり直す。俺の討伐救助と、お前の撤収救助。どちらが多く救えるか競う」
王立訓練迷宮に二十人の志願者を配置し、魔導人形が襲う中で安全地帯へ運ぶ。先に全員を救った方が勝ち。
「負傷者役に危険は?」
「防護結界をつける」
「途中で本当の危険が出たら、中止を俺が決める」
「構わん」
条件を詰め、翌日に決まった。
リゼは心配そうに俺を見る。
「受けるのですか?」
「あいつだけじゃない。強い者が一人いれば救助はいらないと思う人は多い。違いを見せる機会だ」
「勝つつもりですね」
「勝つ必要はない」
「え?」
「二十人が無事なら、俺たちの目的は達成だ」
翌朝、再び競技場に人が集まった。
今度は誰も、救助競技を余興とは呼ばなかった。
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