第45話 リゼを捨てた騎士団
北側通路を指揮していたのは、リゼを追放した北部騎士団だった。
「王太子殿下を先に! 一般人は道を開けろ!」
元上官が叫ぶ。
リゼは大盾を床へ突き立てた。
「その門は魔力管の上です。百人が乗れば崩れます」
「また撤退を口にするか、カルドナ!」
「これは避難誘導です」
「除名者が命令するな!」
王太子が騎士の肩越しに周囲を見た。
泣く子ども。倒れた老人。自分たちのために押し戻される民衆。
「彼女の指示に従え」
「殿下?」
「私だけが助かっても、王太子ではいられない」
リゼは驚いたが、すぐに配置を変えた。
「騎士十名で北門を閉鎖。残りは二列の誘導路を作ってください。殿下は歩けない方々と南口へ」
元上官は歯を食いしばりながらも従った。
途中、観客席の支柱が折れた。
リゼが盾で受ける。
「早く通って!」
騎士たちは一度、彼女を置いていきかけた。
かつて谷で、新人を逃がすため残った彼女を見捨てた時と同じように。
しかし若い騎士が引き返し、盾の横へ肩を入れた。
「一人で支えるな!」
続いて二人、三人。
元上官も最後に戻った。
「全員通過まで持たせるぞ!」
リゼは何も言わず、うなずいた。
最後の老人が南口へ抜けた後、全員同時に支柱を離す。観客席が崩れる前に、安全線を越えた。
元上官が息を整えながら言う。
「お前の判断は……正しかった」
「今は謝罪より点呼です」
リゼはそこで立ち止まらなかった。
過去の評価を取り戻すためではなく、目の前の命を帰すために動く。
北部区画、避難完了。
残るのは、崩れた中央席の百二十七人だった。
---




