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外れスキル《撤収》しかない転生者、全員生還の冒険者ギルドを作る ~「逃げたら負け」の異世界ですが、命を持ち帰る俺たちが攻略率一位です~  作者: kaiくん
第五章 王都救助競技会

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第42話 留守を任せる勇気

「北門の荷車事故、負傷者三名!」

 訓練初日、ハンスが報告へ飛び込んできた。

 俺は反射的に立ち上がる。

「ティナ、救護袋を――」

「座っていてください」

 リゼに肩を押される。

 今日は俺が不在という想定だ。

 ティナが救護班二名を選び、ドーガが担架を荷車へ固定する。フィンは地図を開き、混雑を避ける経路を示した。

「帰還灯は使わないんですか?」

 ハンスが尋ねる。

「地上で三名。荷車の方が魔力を温存できます」

 ティナの判断は正しい。

 俺が口を挟む必要はない。

 それでも手の置き場がなく、机の上を何度も拭いた。

「落ち着かんなら薪でも割れ」

 ドーガに斧を渡された。

 三日間で、俺抜きの出動訓練を五回行った。

 最終日は予告なし。訓練用の救難鐘が鳴ると、ティナが臨時指揮を執った。

「フィンさん、地図。ドーガさんは移動灯。ハンス班は地上受け入れ。私は現場へ行きます」

 迷いはない。

 俺が作った十九枚の手順書は、三枚に整理されていた。

「減らしすぎじゃないか?」

「細かすぎると現場で読めません」

 フィンが答える。

 俺は皆を守るためだと思い、判断を自分へ集めていた。

 けれど、それでは俺が倒れた時に全部止まる。

 前世の失敗も同じだった。自分が残れば何とかなると思い、助けを求めるのが遅れた。

 王都へ出発する朝、俺はギルド長の鍵をティナへ渡した。

「無理だと思ったら依頼を断っていい。迷ったら、帰す方を選んでくれ」

「はい」

「何かあれば――」

「伝令を送る前に、できることをします」

 ティナが少し笑う。

 リゼと馬車へ乗ると、軒先に全員が並んだ。

 青い灯は、俺がいなくてもともっている。

「心配ですか?」

「心配だ。でも、任せる」

「それも撤退と同じです。手放すのは、諦めることではありません」

 馬車が動き出した。

 俺は振り返るのを一度だけにした。

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