第39話 新人使い捨ての帳簿
赤晶鉱山の帳簿。
エマの記録水晶。
ガレスが持ち帰った依頼書と、中央本部の刻印板。
三つを重ねると、バルガスの仕組みが見えた。
中央本部は、未調査の迷宮区画を実際より低い危険度で登録していた。銅級や新人へ採取依頼として紹介し、その後ろから秘密の採掘隊を入れる。
新人が生還すれば安全性の実績になる。
死ねば「予測不能な迷宮変動」で処理する。
採れた希少魔石は帳簿外で売却し、一部を凱旋教会へ渡していた。
「亡くなった方の一覧です」
フィンが名簿を広げる。
三年間で百四十二名。
ほとんどが銅級、孤児、借金を抱えた者。救難鐘が鳴っても、低報酬を理由に救助が遅れた。
「地下三層の子どもたちも、その一つだった」
俺の声が震えた。
トトが依頼に来なければ、彼らも数字になっていた。
リゼが拳を机へ置く。
「公開しましょう」
「本部は資料を偽物だと言う」
「証人がいます」
エマとガレス、鉱山の二十三人。南区の六十四人。
マルコは商人組合を動かし、資料の写しを各地へ送った。一か所で没収されても消せないようにする。
翌朝、中央本部は俺たちを《虚偽情報による組織扇動》で告発した。
同時に、バルガスは公開審問の開催を発表した。
「大勢の前で我々を潰すつもりです」
ティナが不安そうに言う。
「逆だ」
ドーガが髭を撫でた。
「大勢の前でしか、あいつは潰せん」
審問当日。
中央広場には入りきらないほどの人が集まった。
バルガスが高壇から告げる。
「冒険者の勇気を否定し、恐怖を広める《帰還灯》の罪を、今日ここで明らかにする!」
俺は百四十二名の名簿を持って壇上へ上がった。
「明らかにするのは、こちらです」
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