第37話 「今さら助けてくれ」
共鳴石を頼りに、俺たちは南区迷宮へ入った。
中央本部の許可はない。
今さら一つ違反が増えても同じだとドーガは笑った。
フィンの地図では、新迷宮の北端が、崩落した旧第九層へ接している。岩の隙間に、金獅子の紋を刻んだ金属片が落ちていた。
「最近動かした跡があります」
細い通路を進むと、扉を打つ音が聞こえた。
三回、三回、二回。
《金獅子》の救難符号。
「ガレス!」
返事はない。
ドーガが扉の蝶番を外し、リゼと二人で引く。
石室の奥に、一人の男が座っていた。
金色だった鎧は黒く汚れ、大剣は半分に折れている。頬はこけ、左目に布を巻いていた。
「ユアン……?」
ガレスだった。
その顔に喜びはない。
「なぜ、お前が来た」
「救難信号を受けた」
「俺を笑いに来たのか。臆病者に助けられる英雄を見に」
エマが前へ出る。
「ガレス、ロルフとセシルは?」
沈黙で答えは分かった。
「最初の崩落は生き延びた。ケルベロスも倒した。だが奥へ進むほど通路が閉じた。食料が尽きて……二人は俺をここへ押し込み、外で魔物を止めた」
ガレスの声がかすれる。
「俺が撤退を認めていれば、二人は生きていた」
俺の中に、怒りがないわけではなかった。
あの日の「あと少し」という声。審問室で浴びた視線。ガレスが拒んだせいで、俺は三人を帰せなかった。
「立てるか」
「今さら助けてくれと言えば、満足か?」
「満足はしない」
俺は救助札を差し出した。
「でも、生きたいなら言え。俺はそのために来た」
ガレスは札を見つめた。
「……帰りたい」
以前なら絶対に口にしなかった言葉を、彼は絞り出した。
青い線が、俺たちをつないだ。
その時、ガレスの背後に積まれた箱へフィンの灯りが当たった。
中央本部の封印と、赤晶鉱山と同じ搬出番号が刻まれていた。
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