第30話 攻略率一〇〇パーセント
赤晶鉱山の不正は、王国中へ知れ渡った。
監督官ゼムと会社幹部は逃亡先で捕まり、入口の帰還点を壊した衛兵も逮捕された。帳簿には、中央冒険者本部の一部職員へ金が流れた記録も残っていた。
本部長バルガスは「現場職員の独断」と発表した。
誰も信じてはいない。それでも、彼を直接裁く証拠には足りなかった。
俺たちにとって重要なのは、二十三人が証言台へ立てたことだ。
バド班長も、ティナの治療で杖を使って歩けるまでになった。
「あの時、急いで運んでいたら二度と立てなかったでしょう」
治癒院の医師がそう評価し、ティナは初めて公的な治療証明へ署名した。
フィンの坑道地図は、再調査隊の標準図面になった。
ドーガの加入で所属は五名となり、《帰還灯》は正式な小規模ギルドとして登録された。ただし中央本部の監督下に置かれ、迷宮立入許可は依頼ごとに必要だ。
「自由になったようで、首輪は残っとるな」
ドーガが新しい看板を打ちながら言う。
「一歩ずつだ」
そして、もう一つの数字が注目された。
設立から受けた救助・討伐依頼、六件。
達成、六件。
依頼中の死者、ゼロ。
迷宮新聞は大きな見出しをつけた。
《逃げてばかりの新設ギルド、攻略率一〇〇パーセント》
好意的なのか皮肉なのか分からない。
だが記事を読んだ下級冒険者が、少しずつ《生還共済》へ加入し始めた。
開業から一か月後。
ハンスたち十一人が、約束どおり加入試験へ来た。
基礎体力、点呼、負傷者搬送、撤退合図。最後は模擬迷宮から全員で帰る課題だ。
最初に入った時より、剣は少ししか上達していない。
けれど、一人も見落とさなかった。
「全員合格」
子どもたちが飛び上がる。
俺は新しい所属札を配った。
「覚えておけ。攻略率一〇〇パーセントは、勝率じゃない」
ハンスがうなずく。
「全員で帰った割合だろ」
「そうだ」
軒先の青い灯が、以前より少し明るくなった。
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