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外れスキル《撤収》しかない転生者、全員生還の冒険者ギルドを作る ~「逃げたら負け」の異世界ですが、命を持ち帰る俺たちが攻略率一位です~  作者: kaiくん
第三章 赤晶鉱山救出戦

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第29話 最後に残る盾

四度目の進入が、最後の戦いになった。

 鉱山主の再生は止まっている。だが追い詰められた魔物は、坑道を巻き添えに暴れ始めた。

「核まで道を開ける!」

 リゼが大盾で鉤爪を受け流す。

 アレクシスの金雷が甲殻を裂き、ドーガの大槌が脚の関節を砕く。フィンは落石の位置を読み、ティナが傷を即座に固定した。

 俺は戦えない。

 だから全員を見る。

「右壁が落ちる! 五歩前へ!」

 岩が背後を塞ぐ。

「アレクシス、次の一撃で魔力を残せ!」

「指図するな!」

 言いながらも、勇者は雷を絞った。

 聖剣が黒い核を貫く。

 甲虫の巨体が激しく震え、赤い光が消えた。

 勝った。

 同時に、天井が崩れ始める。

「全員、撤収範囲へ!」

 ティナ、フィン、ドーガが俺のもとへ走る。アレクシスも聖剣を引き抜いた。

 リゼだけが動かない。

 倒れた鉱山主の脚が通路を塞ぎ、背後から岩が迫っている。彼女は盾を支柱代わりに立て、退路を保っていた。

「先に帰してください!」

「リゼ、来い!」

「私が離れれば、その前に天井が落ちます!」

 以前の俺なら、彼女の犠牲を受け入れてでも他を帰したかもしれない。

 今は違う。

「アレクシス、十秒支えろ!」

「命令するなと言った!」

 勇者が飛び、聖剣を崩れた梁へ突き立てる。金雷が網となって天井を支えた。

「十秒だけだ!」

 俺はリゼの腕をつかんだ。

「救助同意を確認する。帰ると言え」

「でも――」

「君自身も必ず帰る。それが加入条件だった」

 リゼが息をのむ。

 盾の向こうで、亀裂が広がる。

「帰ります」

 青い線が、彼女の胸へつながった。

「全員登録! 《隊列撤収》!」

 天井が落ちる寸前、青光が俺たちを包んだ。

 西斜面へ転がり出る。

 アレクシスが土を払い、俺を睨んだ。

「十秒を十一秒使ったな」

「悪かった」

「次は俺にも先に計画を話せ」

 次がある。

 それは彼なりの、生還を認める言葉だった。

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