第29話 最後に残る盾
四度目の進入が、最後の戦いになった。
鉱山主の再生は止まっている。だが追い詰められた魔物は、坑道を巻き添えに暴れ始めた。
「核まで道を開ける!」
リゼが大盾で鉤爪を受け流す。
アレクシスの金雷が甲殻を裂き、ドーガの大槌が脚の関節を砕く。フィンは落石の位置を読み、ティナが傷を即座に固定した。
俺は戦えない。
だから全員を見る。
「右壁が落ちる! 五歩前へ!」
岩が背後を塞ぐ。
「アレクシス、次の一撃で魔力を残せ!」
「指図するな!」
言いながらも、勇者は雷を絞った。
聖剣が黒い核を貫く。
甲虫の巨体が激しく震え、赤い光が消えた。
勝った。
同時に、天井が崩れ始める。
「全員、撤収範囲へ!」
ティナ、フィン、ドーガが俺のもとへ走る。アレクシスも聖剣を引き抜いた。
リゼだけが動かない。
倒れた鉱山主の脚が通路を塞ぎ、背後から岩が迫っている。彼女は盾を支柱代わりに立て、退路を保っていた。
「先に帰してください!」
「リゼ、来い!」
「私が離れれば、その前に天井が落ちます!」
以前の俺なら、彼女の犠牲を受け入れてでも他を帰したかもしれない。
今は違う。
「アレクシス、十秒支えろ!」
「命令するなと言った!」
勇者が飛び、聖剣を崩れた梁へ突き立てる。金雷が網となって天井を支えた。
「十秒だけだ!」
俺はリゼの腕をつかんだ。
「救助同意を確認する。帰ると言え」
「でも――」
「君自身も必ず帰る。それが加入条件だった」
リゼが息をのむ。
盾の向こうで、亀裂が広がる。
「帰ります」
青い線が、彼女の胸へつながった。
「全員登録! 《隊列撤収》!」
天井が落ちる寸前、青光が俺たちを包んだ。
西斜面へ転がり出る。
アレクシスが土を払い、俺を睨んだ。
「十秒を十一秒使ったな」
「悪かった」
「次は俺にも先に計画を話せ」
次がある。
それは彼なりの、生還を認める言葉だった。
---




