第26話 S級勇者アレクシス
西斜面を下りる前に、鉱山正面から爆音が響いた。
金色の雷が山肌を走り、崩れた入口を吹き飛ばす。
「派手な奴が来たな」
ドーガが目を細める。
土煙の中から、白銀の鎧を着た青年が現れた。背には聖剣。胸元には凱旋教会の太陽紋。
S級勇者、アレクシス・ヴァーン。
単独で竜を退けた、王国最強の冒険者だ。
「救難鐘を確認した。階層主はどこだ?」
開口一番、負傷者ではなく敵を尋ねた。
「先に二十三人を治癒院へ運びます」
「生存者はいるのか」
「全員です」
アレクシスが初めて俺を見る。
「お前が《金獅子》を見捨てた撤収使いか」
「告示だけなら、そう書いてある」
「今度は仕事をしたらしいな。あとは俺が鉱山主を倒す」
リゼが進路を塞いだ。
「坑道は不安定です。構造を確認せず入れば、二次崩落を起こします」
「魔物を残せば、鉱山全体が崩れる」
「だから準備してからです」
アレクシスは悪人ではない。
その目にあるのは、迷いのない使命感だ。自分が倒せば終わる。それを何度も実現してきた強者の目だった。
「救助が必要になるのは、敵を倒す力が足りないからだ」
彼は聖剣を抜いた。
「最初から俺がいれば、逃げる必要もなかった」
「敵を倒すまで、鉱山が待ってくれる保証はない」
「待たせる」
金雷が刃を包む。
アレクシスは崩れた入口へ入っていった。
その背を見送り、ドーガが吐き捨てる。
「ああいう奴ほど、下で支柱を直す人間を見ん」
俺たちは負傷者をふもとの村へ運んだ。会社の監督官ゼムは姿を消していたが、リゼが地元衛兵へ帳簿を渡し、関係者の拘束を求める。
その夜、山が大きく揺れた。
坑道から金色の雷が噴き上がる。
同時に、帰還紋が熱を持った。
俺たちはアレクシスを登録していない。
それでも、地下の仮帰還点から救難の反応が届いている。
「戻るぞ」
リゼはもう盾を背負っていた。
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