第25話 二つ目の灯
《《複数帰還点》を解放します》
頭の中に、二つの灯が浮かんだ。
一つは今作った西斜面の帰還点。もう一つは、地下の退避所に置いた青い灯石だ。
正式な帰還紋を刻んでいない。ただの目印だったはずなのに、新しい技能はそこを仮帰還点として認識している。
「これなら地下へ直接戻れる」
「戻る必要があるのか?」
ドーガが眉を上げた。
「俺が地下の全員を登録し直し、帰還方向を指定する必要がある。地上の灯は頼めるか」
「誰かが壊しに来たら?」
「その時は、灯より先に自分を守ってくれ」
「救助屋は面倒な注文をするな」
悪態をつきながら、ドーガは大槌を構えた。
俺は西斜面の灯を第一帰還点として固定し、地下の光を選ぶ。
「《転点》」
青い光に包まれ、次の瞬間には退避所の床へ膝をついていた。
「ユアン!」
リゼが駆け寄る。
安堵した顔を見て、約束を守れたことにほっとした。
「地上に二つ目の灯を作った。全員帰せる」
歓声が上がる。
だが、先に手順を確認する。
二十三人の救助札。ティナ、フィン、リゼ。バドの容体。所持品は命に必要な物だけに絞る。
「帳簿は?」
リゼが胸元の防水袋を示す。
「持っています」
「では班ごとに登録する。帰還後はその場を離れず、ドーガの指示に従え」
第一陣十二名。
光が消えると、地下の人数が半分になる。再使用まで十二分。残った者は誰も焦らず、訓練どおり壁際で待った。
二回目に十一名とフィン、ティナを送る。
最後は俺とリゼだけになった。
遠くで岩が砕ける。
赤い光の向こうから、巨大な鉤爪が退避所の入口へ突き出た。
「鉱山主か」
リゼが盾を構える。
「もう守る相手はいない。俺たちも帰るぞ」
「はい」
ためらいのない返事だった。
《撤収》を発動する。
地上へ出た瞬間、第三坑道が内側から崩れた。
二十三人全員。俺たち四人。ドーガ。
欠員はない。
ドーガが俺へ大きな手を差し出した。
「お前のところ、運搬士は募集しとるか?」
「戦えないぞ」
「だから聞いとる」
俺はその手を握った。
五人目の仲間が決まった。
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