第24話 運べないなら、俺が担ぐ
ドワーフは煤だらけの髭を払い、俺たちを見回した。
「二十三人と四人。負傷者は一人か」
「あなたは?」
「ドーガ・ボルグ。昔この鉱山で運搬主任をしとった。今は閉鎖坑道の先で、屑鉄を拾って暮らしとる」
なぜ二日も出口を掘っていたのかと聞くと、救難鐘の振動を岩越しに感じたという。
「会社の連中は第三坑道を埋める時、わしまで閉じ込める気だったらしい。しぶとく生き残って悪かったな」
ドーガは笑い、バドの担架を見た。
「それじゃ縦穴は越せん」
「滑車を直すつもりです」
「時間がかかる。貸せ」
彼は背負っていた木と革の枠を広げた。人一人を水平に固定できる運搬具だ。
バドを載せると、枠ごと背負う。
「重いぞ」
採掘夫が心配する。
「赤晶を三百斤運んだことがある。人間一人なら軽い」
縦穴では、ドーガが新しい縄を腰へ結び、壁のわずかな凹凸を登った。俺たちが上下から支える間も、バドの体はほとんど傾かない。
向こう岸へ着くと、ティナがすぐに容体を診る。
「出血は増えていません。完璧です」
「運ぶのも技術だからな。戦えんからと、会社じゃ役立たず扱いだったが」
ティナとフィンが同時にドーガを見た。
《帰還灯》には、似た理由で追い出された者ばかり集まる。
保守通路の先は、子ども一人が通れるほどの狭い煙道だった。
「わしとユアンなら抜けられる。地上へ出て、新しい帰還点を作れ」
「残りは?」
「ここで待つしかない。だが、あの揺れは長くもたんぞ」
リゼが俺の腕をつかんだ。
「行ってください。ここは守ります」
「帰還点を作ったら、すぐ戻る」
「戻らず、地上から撤収を発動すればいいのでは?」
「今の《隊列撤収》は、一つの帰還点から離れた俺が対象を引く技能だ。俺自身が地上にいると、地下の位置をつかめない」
リゼの手に力が入る。
「なら、必ず戻って」
「約束する」
俺とドーガは煙道へ入った。
這って一時間。腕の感覚がなくなった頃、冷たい雨が顔へ落ちた。
山の西斜面だ。
ドーガの小屋から灯石を取り、岩棚へ帰還紋を刻む。
青い灯がともった瞬間、視界に新しい文字が浮かんだ。
《累計生還記録、三十名を確認》
《新たな帰還点の設置条件を達成しました》
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