第23話 帰還点が壊された理由
縦穴の向こうにいた人物は、古い保守通路を知っているらしい。
「西へ行けば地上だ。ただし大柄な人間は通れん! 明かりを振れ、迂回路を教える!」
声に従い、俺たちは別の横道へ入った。
途中の資材室で、フィンが足を止める。
「ここ、最近使われています」
二十年前に閉鎖されたはずなのに、床の埃へ新しい靴跡がある。木箱には鉱山会社の封印。
中身は発破用の火薬と、帳簿だった。
帳簿には、正規の採掘量を大きく超える赤晶の搬出記録。宛先は中央冒険者本部と、名前を伏せた神殿。
「違法採掘の証拠ですね」
リゼがページをめくる。
さらに、今日の日付で《試掘区閉鎖処理》と書かれていた。
使用火薬、支柱切断、入口灯石の撤去。
「帰還点を壊したのも計画の一部だ」
俺たちが救助登録に来ることを、監督官ゼムは知っていた。
二十三人の班は、違法採掘区画を偶然見てしまった。坑道崩落に見せかけて全員を消せば、口を封じられる。
「地上の衛兵も仲間です」
「だから帰還点を任せた時、何も言わなかったのか」
腹の底が熱くなる。
だが怒りで道は開かない。
「帳簿と火薬の封印を持っていく。原本は防水布へ」
「ゼムを捕まえますか?」
「先に二十三人を帰す。証人が死ねば、帳簿だけ偽物にされる」
資材室を出る時、壁の赤晶が強く光った。
脈打つような振動。
奥の闇で、何か巨大なものが身じろぎする。
違法採掘は、単に量を隠すためではない。
会社は自然迷宮の深部まで掘り抜き、眠っていたものを起こした。
「急ごう」
退避所へ戻ると、ティナが顔を上げた。
「バドさんを動かせます。ただし水平に保ってください」
採掘夫たちが担架を囲む。
しかし屈強な四人で持っても、縦穴と狭い通路を越えるのは難しい。
そこで鉄扉の方から、岩を転がすような足音が聞こえた。
「おう、迎えに来てやったぞ!」
現れたのは、背丈は低いが樽のように太いドワーフだった。
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