第22話 出口のない救助隊
閉鎖された第三坑道へ続く鉄扉は、赤錆で固まっていた。
採掘夫がつるはしを差し込み、五人がかりでこじ開ける。冷たい空気が流れ出した。
「空気は生きています」
フィンが細い布を入口へかざす。
「どこか地上につながってる。ただ……奥が暗すぎる」
声が震えている。
「入口で地図を描いてくれ。見える範囲からでいい」
「でも、僕だけ安全な場所に――」
「役割分担だ。怖さを隠して先頭へ出る方が危険だ」
フィンはうなずき、扉周辺の幅と支柱を測り始めた。
広い保管室が近くにあった。天井は低いが岩盤が厚く、古い通気管も残っている。
「ここを一時退避所にする」
食料と水を集め、負傷者を寝かせる。灯石を中央に置き、採掘夫を四班へ分けた。
一班は支柱補強。二班は水。三班は第三坑道の偵察。四班は負傷者の補助。
「指揮に慣れてるな」
リゼが言った。
「前世では、救助隊の末席だった。人の割り振りを見ていただけだ」
「見て覚えたことも、力です」
ティナはバドのそばから動かなかった。
「腰の血管をつないでいます。三時間あれば搬送できます」
「急がせて悪化させるより待つ。揺れが強くなったら知らせる」
ティナの肩から力が抜けた。
以前のパーティーなら、三時間も待たなかったのだろう。
第三坑道へ入った偵察班が、すぐに戻った。
「先に縦穴があります。梯子は腐ってる。向こう岸に道が見えるが、班長を運ぶのは無理だ」
俺とリゼも確認へ向かう。
縦穴は深さ十メートルほど。底では赤晶をまとった虫型魔物がうごめいている。上には古い荷運び用の滑車が残っていたが、縄は朽ちていた。
「新しい縄を渡せば、担架を吊れます」
「支点がもつか確かめる必要があるな」
その時、縦穴の反対側から金属を叩く音がした。
三回。間を置いて、また三回。
人間の合図だ。
「誰かいる」
灯石を掲げると、向こうの暗闇から太い声が返った。
「やっと来たか! こっちは二日も出口を掘っとるぞ!」
姿は見えない。
だが、その声は不思議なほど元気だった。
---




