第21話 赤晶鉱山の二十三人
救難鐘が三回。
坑道全体が崩れる合図だ。
「二列で壁際へ! 走るな!」
リゼの声が暗闇を切る。
採掘夫たちは訓練どおり、肩へ手を置いて並んだ。俺は先頭から救助札を確認する。
「バド班長がいない。フィン、声の方向は?」
「東の試掘区です。でも、会社の図面には通路がありません」
爆発でひび割れた壁の向こうに、赤い光が漏れていた。
壁ではない。薄い石板で隠された入口だ。
「会社が隠していた坑道か」
リゼが盾で石板を押す。狭い通路の奥に、バドが倒れていた。足元には切れた導火線と、赤晶を詰めた木箱がある。
「班長!」
採掘夫が駆け寄る。
バドの背には落石が乗っていた。ティナが脈を確認する。
「生きています。腰を動かさないでください」
皆で岩をどけ、板へ寝かせる。ティナの緑光が時間をかけて体の奥へ入っていった。
「内出血があります。歩かせられません」
これで二十三人全員を確認できた。
だが帰還点はない。
「入口へ戻る」
来た道を急ぐと、途中の支柱がまとめて倒れていた。爆発だけではない。木材の根元が、鋸で半分まで切られている。
採掘夫の一人が青ざめた。
「誰かが、わざと……」
「今は証拠を持っていくだけだ」
切断面の欠片を袋へ入れる。
その直後、天井が鳴った。
「下がれ!」
リゼの盾が頭上へ上がり、崩れた石を受ける。大きな岩が通路を塞ぎ、入口側の空気が途絶えた。
正面の出口は失われた。
フィンが震える手で地図を開く。
「古い第三坑道なら、山の西へ抜けられるかもしれません。でも二十年前に閉鎖されています」
「距離は?」
「この人数で、六時間以上。途中に自然迷宮があります」
背後では、赤晶の光が脈打っていた。
振動がまた一つ、近づく。
俺は二十三人を見た。
「全員で第三坑道へ向かう。置いていく者はいない」
「班長は運べないぞ」
「運ぶ方法を作る。まず、次の崩落が来ない場所へ移る」
《撤収》が使えないなら、歩いて帰る。
帰る方法は、一つではない。
---




